わさんみつのお話

旅の記録を中心に、様々な情報を書き綴っていきます。

【始発⇒終電】関東7都県を140円で一周、「大回り乗車」に挑戦してきた。 ②「試練」

この記事はシリーズものです。是非①からご覧ください。

①⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/20/200000

 

6:02 東京駅(東京都)

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着いた瞬間に目が覚めるというちょっとした奇跡に救われ、無事降車。ご存知日本を代表するターミナル駅、東京駅です。

 

ここでの乗り換え時間は8分。しかし、この先千葉県内に入ると駅構内での買い物が満足に出来なくなる可能性があります。時間は少ないですが、ここらで一度食糧調達をしておきたいと思い、駅弁屋さんでお昼ご飯用のシューマイ弁当を一つ購入しました。

 

さあ電車の出発まであと5分、「次のホームはどこだっけ」とスマホを取り出します。

 

ふむふむ次に乗る電車は・・・「京葉線」。

 

・・・ん?京葉線?あと5分で出発?

 

 

 

 

やばくね?

 

 

2時間ぶり本日2回目の全力疾走(早歩き)が始まりました。名付けて京葉ダッシュ。亀梨和也がよく小指を立てながら「ギリギリでいつも生きていたいから~」と歌ってますが、私は別に望んでギリギリに生きてるわけでも、話のネタが欲しくて走ってるわけでもありません。ただ普通に生きてるだけなのに、日々こうなっちゃうんですよね。生きづらい世の中です。

 

にしても京葉線遠すぎる。ただ今回は橋本の夜道とは異なり、仲間が数人いました。それも仲間たちは、慣れた足取りと言わんばかりに一定のスピードを維持し、慌てることもなく淡々と進んでいきます。なんて頼もしい仲間たちでしょう。憧れはしないけど。

 

6:10発 京葉線 蘇我行き

 

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慌てていたのか、写真はブレブレでした

頼もしい仲間たちに導かれ、無事に乗り込むことが出来ました。写真のブレに、私の焦りがにじみ出ています。これから、3県目にして最も長い時間を過ごすことになる千葉県へと向かいます。

 

車内はさほど混んでおらず、空席もちらほら。ただ妙に気になったのが、この時間からディズニーのかばんを持った人がチラホラいること(主に女性)です。ディズニーで買い物した時にもらえる紙袋とか、名前分からんけど明らかにディズニー系のキャラクターのストラップをつけてる人だとか、とにかく明らかに「今からディズニー行きます!」って装いの人が社内の半分を占めています。ちなみに私はディズニーの知識が皆無です。

 

こんな時間からディズニーに行くっていうのか?

 

ど平日、それも雨の中で、開園前からディズニーの前で待機しようとでもしてるのか?

 

こいつらは暇なのか?(お前が言うな。)

 

あまりに理解できず、10分ぐらい真剣に悩んで舞浜駅の直前でようやく気付きました。そうかこの人たちは、今からディズニーで働くのか。暇とか言ってしまったこと、とても申し訳ない気持ちになりました。始発から意味もなく電車に乗っている私の方がよっぽど暇人でした。すいませんでした。

 

舞浜でけっこうな人数が降り、だいぶ車内がガラガラになった後、新浦安駅にて本日最初の高校生とエンカウントしました。それも、女子高生です。ちょっとテンションあがります。

 

よく見ると女優の波留に似た美人さんです。かわいい。今のところ今日で一番テンションあがっています。

 

京葉線は、「無印良品は消費税込み価格」という、だからどうしたと言いたくなる情報を垂れ流しながら淡々と進んでいきます。私のメモには、「南船橋駅はけっこう人の乗り降りが多い」という多分残りの人生で二度と使うことの無いだろう知識と、「千葉みなと駅でモノレールとすれ違った!!」という急にハイテンションな情報が記されていました。相当暇だったんでしょう。

 

そんなことを言ってるうちに、次の乗換駅にやってまいりました。

 

6:58 蘇我駅(千葉県)

 

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ついに千葉県上陸です。これから、本日の最難関とも言うべき房総半島一周に挑みます。

 

暇だったくせに電車の中で次の乗り換えをちゃんとチェックしていなかったので、ホームで慌てて確認します。次に乗る電車の情報を、スマホに保存されたYahoo!乗換案内のスクリーンショットで確認。ふむふむ、意外と時間あるな。

 

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あれ、こんなに余裕あったっけ?と少し疑問に思いましたが、まあスクリーンショットにそう書いてあるんだからそうなんでしょう。だったら少し蘇我駅で時間を潰すとしますか。

 

蘇我駅は意外と(?)栄えており、駅構内にはコンビニだけでなく、蕎麦屋や牛丼屋といった飲食店も備えている充実ぶり。ちょっとテンションがあがります。また、駅全体がJ2に所属するサッカーチーム「ジェフ千葉」一色です。朝ごはんもろくに食べていなかったので、今後の長旅に備えて、蘇我で少し腹ごしらえをすることにしました。東京駅で買ったシューマイ弁当は昼に回します。

 

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駅構内で食べるご飯は立ち食い蕎麦と相場が決まっています。私もその例に漏れることなく、迷わず立ち食い蕎麦屋を選択しました。どうせなら旅らしさを出したいと思い、なんだかご当地名物っぽい名前をしている鴨そばを注文しました。後で調べたところ、鴨そばは千葉とは全く関係がないようです。

 

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にしても、ジェフ千葉はいつになったらJ1に復帰するんでしょうか。毎年昇格候補に挙げられながら、かれこれ10年J2でくすぶっています。それどころか最近は下から数えた方が早い順位です。

 

ちなみに私は、低迷しているサッカーチームの専用掲示板を眺めるという非常に性格の悪い趣味を持っています。ジェフ千葉の掲示板はいつでも暇つぶしになるのでとても重宝しています。エスナイデル前監督に対する罵詈雑言はとても見ごたえがりました。最近だとサガン鳥栖の掲示板が非常に良かったですね。

 

さて、お腹も満たされたことだしそろそろホームに向かいましょう。ホームはこれまでの駅とはうって変わって人であふれています。さすがに今から並んで座るのは難しそうです。念のため電光掲示板を見て次に乗る電車を確認します。

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写真は終始ぶれぶれです。反省します。

 

 

・・・ん?外房線?

 

私が乗るつもりでいた7:17発の安房鴨川行きの表示の上には確かに「外房線」と書いてあります。おかしい。俺はこれから内房線に乗るはずだ。そんなはずはない。

 

あわててスマホを取り出しました。先ほどのスクリーンショットを確認します。確かに外房線と書いている。もしや・・と思い一枚画像をスライドします。そして気づきました。

 

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これが、私が本来乗るつもりだった電車のスクリーンショットです。さきほどのスクリーンショットは、スケジュールを立てている時に候補として残しただけのもので、結果ボツになったけれども、削除し忘れていた画像でした。ホームで慌てて次の電車を確認した時に、よく確認せずに違う画像を見てしまっていたのです。

 

要は、やらかしました。開始2時間半で最初のミスをしでかしやがりました。まあでも、どうやら次の内房線はすぐ出るみたいですし、15分程度の遅れならそこまで大きな損失にはならないでしょう。小さなミスをいつまでも引きずっていても仕方ありません。気を取り直して、ホームに入って来た内房線の電車に乗り込みます。

 

後から思えば、この時の私は内房線をとても甘く、いや、とてもとても甘く見ていました。

 

 

7:19発 内房線 上総湊行き

 

高校生でごったがえす車内で、この圧倒的アウェイを乗り切るためにドア横を強気に陣取り自らのスペースを死守しながら、乱れの生じたスケジュールの再調整に取り掛かります。ここで私はようやく、自分のおかしたミスの大きさに気づかされました。

 

下の画像は、内房線の最後の3分の1にあたる、館山駅⇒安房鴨川駅の時刻表です。

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そう、この内房線、なかなかに本数が少ないんです。その数、約1時間半に一本です。

 

なにが「大都市近郊区間」じゃ。ただの田舎じゃねえか。

 

調べたところによると、安房鴨川駅への到着予定は10:52です。蘇我駅で乗り換えをミスすることがなければ、安房鴨川への到着予定は9:43でした。初め、わずか15分足らずと思われた損失は、ふたを開けてみると1時間以上の損失だったのです。

 

加えて、その後の乗り換えを調べてみると、当初予定していた大網駅から銚子方面に海沿いを大きく周り成田駅まで行くコースは、この1時間以上の遅れにより断念せざるを得ないことが分かりました。大網駅から成東駅、佐倉駅と内陸部をショートカットしなければ、成田駅の先に待つ北関東3県攻略に間に合わせることができません。

 

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新しい予定経路です。千葉県の右のふくらみを断念します。

 

やってしまった。これはやってしまった。開始わずか2時間半でのスケジュールの再調整は、この先の道のりを考えると相当メンタルに響きます。ジェフ千葉の掲示板を娯楽目的で覗いていた天罰が下ったとでもいうのでしょうか。

 

思えば、蘇我駅で乗り換え電車を確認した時に感じた違和感を感じていました。なぜその時によく確認しなかったのか。そもそもなぜ蘇我駅に着く前によく確認しなかったのか。確認不足、油断、もともとのスケジュール管理の甘さ・・・。自分のあまりの愚かさに悔しさが募ります。悔しい。本当に悔しい。

 

 

私が悔しさに打ちひしがれ呆然としていると、視界の隅で自分の斜め前に立つ女子高生の鼻に虫が止まりました。友達に指摘されて慌てて女子高生が振り払うと、虫は相当ダメージを負ったようで、雨水に濡れた床の上で弱弱しくパタパタともがいています。

 

すると次の瞬間、その女子高生が持っている傘の先端で、虫を自分のほうに押し出してくるではありませんか。それも、わりと強く、しつこく押してきます。おいおいやめてくれよ。なんで内房線のドア横のわずかなスペースを息絶え絶えの虫とシェアハピしなきゃいけないんだ。俺は今ただでさえ心が折れてるんだ。頼むからやめてくれ。

 

気づけば外は大雨です。大雨どころか強い横殴りの風も吹いてきて、台風が近づいてきていると言われてても驚かないくらいの悪天候です。にもかかわらず、厳根駅のホームはほとんど屋根がなく、高校生たちがずぶ濡れになっており、私の目の前にもずぶ濡れの女子高生が乗り込んできました。ちょっとテンションが上がります。

 

 

しばらくすると、度々入れ替わりを見せつつ車内の大部分を占領していた高校生たちは、大貫という駅でまとめて全員降りていきました。若い声で賑わっていた車内は、一気に私と、真っ黒いパーカーでiPadにやたらと集中している青年との二人っきりになりました。高校生の大群に車内を占拠される圧倒的アウェイを乗り切った仲間意識から、「何見てるん?」とよっぽどダルがらみしようかと思いましたが、どう考えても他者からの干渉を望んでいるような雰囲気に見えなかったのでやめておきました。

 

佐貫という駅のあたりで、外の景色がマジモンの田舎になっていきました。そして、景色の奥に内房線で初めての海を確認。事前情報によると内房線は、相当の距離海沿いを走ることになるようです。

 

8:27 上総湊駅(千葉県)

 

上総湊(かずさみなと)駅周辺は、信じられないくらいなにもありません。この嵐だというのにホームに屋根すらありません。あるのは小さな小屋のようなものだけです。次の電車までは30分以上あるので、ひとまず小屋の中で雨風をしのぐとします。

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上総湊駅のホームにある小さな待合所

 

小さな小屋の中には壁沿いにベンチのようなものがあり、数名のおばさんが電車を待っていました。彼女たちは特に顔見知りでもないようですが、同じ地域に住み、同じ電車を待っている者の共同意識からでしょうか、簡単なあいさつを交わしささやかな世間話を楽しんでいます。残念なことに、どう考えてもこの小屋の中で異質な空気を放っている私は誰からも声をかけられませんでした。

 

外を見ると、この天気だというのに灰皿の前で一生懸命タバコを吸おうとしているおじさんがいました。しかし、いくら傘をさしているとはいえこの横殴りの雨ではさしてないも同然です。全くタバコに火をつけられそうにありません。そこまでして吸いたいんでしょうか。

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それにしてもこの小さな小屋は、ゴミが散乱した床と牛の糞のような異臭が気になります。こんな劣悪な環境で、次の電車まで30分も待機しなければいけません。内房線はとにかく試練を与えてきます。

 

試練といえば、内房線の車内で乗り換えを失敗した心理的ダメージはだいぶ和らいだものの、ここに来る過程で私は、新たな問題に直面していました。名付けて「内房線長すぎ問題」。蘇我駅を出発して約1時間10分、これといって代わり映えのしない、ただただ大雨に降られる景色を眺める退屈さに飽き飽きしながら、ほんのわずか目についた外の様子をせっせとメモに残す時間は「暇」以外の何物でもありません。

 

加えて、まだ内房線全体の半分も来てません。長すぎです。気が遠くなります。

 

ため息をつきながら外に目をやると、例のタバコ吸いたいおじさんが未だにタバコと格闘していました。どう考えてもタバコを吸うのに適していないこの環境で決してライターから離れることの無い左手。どんな厳しい環境でも諦めないという強い意志が感じられます。

 

思えば、大雨の中でタバコを吸う彼の姿と、早朝から過酷な大回り乗車に挑戦する私の姿は、重なるものがあります。その行為に何の意味があるのかと問われれば、納得させる答えを提示するのは互いに難しいでしょう。しかし、今私たちの胸には確かに、この困難なミッションを成し遂げたいと願う強い思いがあります。上総湊を襲う強い雨と風は、彼の灯すライターの炎をいとも簡単に消し去っていきます。しかし、どんなに強い雨風であろうと、私たちの胸に灯された炎までもを消し去ることは出来ないのです。

 

その後タバコおじさんは10分遅れでやってきた木更津行にいつのまにか乗り込んでおり、結局彼がどの程度タバコを吸うことが出来たのかは分かりませんでした。どんなに困難な状況でも、諦めることなく最後まで挑み続けた彼の背中。初めは愚かに見えたその背中は、いつしかかっこいい男の生き様を見せつけていました。

 

私もこの試練の内房線、気持ちを絶やさずに乗り切っていきたいと思います。ありがとう、タバコおじさん。

 

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ホームから見えた上総湊駅前の様子

 

 

どんどん強くなる雨風と、なかなか来ない電車。厳しい走り出しとなった房総半島の旅路には、この後、さらなる試練が待っていました。

 

 

③に続く⇒近日公開予定