わさんみつのお話

旅の記録を中心に、様々な情報を書き綴っていきます。

【始発⇒終電】関東7都県を140円で一周、「大回り乗車」に挑戦してきた。④「日向」

この記事はシリーズものになります。是非①からお読みください。

①⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/20/200000

②⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/21/200000

③⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/22/200000

 

11:39発 内房線 安房鴨川行

 

この先の旅路でゆっくり休憩できる時間は少ないであろうと考え、館山駅で、朝に買ったシューマイ弁当をたいらげました。冷えていたこともあって、とりたてておいしいというわけでもなく、普通の弁当でした。

 

さて、車内に乗り込むや否や、スマホを取り出し時刻表との格闘を始めます。奇跡的にここから北関東3県を制覇しゴールの相原駅に帰還するルートはないか、あらゆる可能性を模索します。

 

f:id:tatatamacenter:20190723193323j:plain

これが現在予定しているコース。千葉県の右のふくらみは断念。

 

まず、北関東3県を制覇するためには、友部駅(茨城県)⇒小山駅(栃木県)⇒高崎駅(群馬県)のルートを辿らなければなりません。先の大回り乗車の指定区間の図を見て頂ければ分かると思いますが、友部~高崎以外に北関東を通る選択肢はなく、このルートは不動となります。

 

高崎駅から相原駅の手前にある八王子駅まで行くためには、大宮駅を経由するか、八高線を使うかの2つのルートがあります。しかし八高線は本数も少なくスピードも遅いです。大宮駅を経由した方が確実に早く八王子駅までたどり着くことが出来ます。

 

となると、重要になるのは大宮駅⇒相原駅の終電ですが、Yahoo!乗換案内さんによれば、終電は大宮駅22:50発となっています。つまり、友部~高崎を経由し、この電車に間に合うように大宮駅までたどり着く必要があります。

 

しかし、残念なことにどんなに無駄なく乗り換えを完遂しても、大宮駅に着くのは早くて22:50となります。これでは終電の大宮駅22:50発に乗ることができません。やはり想像した通り、従来の目標の達成は困難な状況にあることが分かります。

 

しかし、この事実はむしろ私にとって希望を抱かせるものでした。というのも、大宮駅着22:50、大宮駅発22:50、この「0分」の乗り換え時間を「2分」程度にまで引き延ばすことが出来れば、相原駅まで帰れる可能性が大きく生まれるのです。

 

じゃあどうやってその「2分」を生み出すのか。そこで私が最も可能性があると感じたのが「電車の遅れ」です。都内在住の方ならお分かり頂けるかと思いますが、都内の夜の電車というのは、しょっちゅう遅れます。2、3分遅れがさもスタンダードであるかのように、当たり前のように遅れてきます。駅員さんにとって「電車遅くなり誠に申し訳ございません」はおそらく口癖になっていることかと思います。

 

ただ残念なことに、大宮駅22:50発埼京線は始発電車であり、遅れは期待できません。しかし、大宮駅に22:50に着く高崎駅発21:30高崎線上野行きを、大宮で降りずに先に進んだ時、可能性を感じさせる「電車の遅れ」が3つ見つかりました。

 

・武蔵浦和で武蔵野線23:01発が2分遅れて来て、それに乗り換える

 

・赤羽で埼京線23:07発が1分遅れて来て、それに乗り換え、新宿経由で八王子に向かう

 

・赤羽で23:16発埼京線に乗り込み、新宿で中央線23:27発が6分遅れで来て、それに乗り換える

 

この3つの「遅れ」のうちどれか一つでも実現すれば、私は相原駅まで帰ることが出来ます。ほんのわずかな希望ではありますが、可能性がゼロとは言えないでしょう。一度絶望にうちひしがれた私にとっては、この実現したら奇跡ともいうべき乗り換えが、立ち込めた雲の狭間から差し込んだ一筋の日光のように、すなわち希望として感じられました。

 

奇跡を実現するためには、今後はどんな失敗も許されません。残り12時間、高い集中力をもって進んでいく必要があります。

 

そういえば車内や車窓は全く見てませんでした。おばさんしか乗ってなかったような気がします。あんまり覚えてないけど。

 

12:30 安房鴨川駅(千葉県)

f:id:tatatamacenter:20190722062159j:plain

 

待ちに待った安房鴨川駅。この駅でようやく内房線は終わりを迎えます。長かった。本当に長かった。

 

少し乗り換え時間に余裕があるので、駅構内を散策します。

f:id:tatatamacenter:20190722062347j:plain

 

改札の横には水槽があり、様々な種類のお魚が泳いでいました。どうやらここは鴨川シーワールドの最寄り駅らしいです。水槽の横には一人のおじさんがおり、水槽にへばりつくようにしてお魚たちを眺めていました。

 

しかしながら、このお魚たちは明らかに、長い内房線を突破した私を祝福しようとしています。なぜ分かるかって?分かるんです。自信を持って断言できます。この魚たちは私を祝福しています。

 

「すまんなおじさん、このお魚たちは俺のものなんだ」と心の中で語気を強めながら、おじさんをもろともせず水槽の前に強引に陣取ると、彼は大人しく去っていきました。私の圧勝です。悔しかったらサカナクションでも聞いて出直して来い。俺は毎日聞いてるぞ。

 

しかし、私の横柄な態度がお気に召さなかったのか、そもそも祝福する気もさほどなかったのか、お魚たちは言うほど私の方には寄って来ませんでした。

f:id:tatatamacenter:20190722062447j:plain


 

12:53発 外房線 千葉行 

 

平日の真昼間から房総半島の先端が人でにぎわっているわけもなく、乗客の寂しい車内。次の大網駅まで約2時間の道のりです。

 

館山駅で先に進むことを決意し、ちょっとだけ元気を取り戻した私ですが、正直まだまだテンションは低いです。予定通りのスケジュールを完遂できそうにないショックは小さくなく、自責の念は募るばかりです。

 

何が言いたいかというと、外房線の車窓から景色を楽しみ、乗客を観察しくだらない想像を繰り広げる余裕は全くなかったということです。それどころか、早くこの外房線から、房総半島から脱出したい、そして出来ればもう二度と来たくない、そんなネガティブな感情だけが心を支配していました。

 

それゆえこの外房線の車内の記憶が全くというほどありません。書くことがありません。こんな時のために、道中メモを大量にとっていたのですが、外房線に関しては8行しか書いてありません。例えば、

 

「お色気お姉さんにちょっとテンションあがる」

 

ちょっと記憶にないです。そんなお姉さんいましたっけ。

 

「本納(ほんのう)を研ぎすませ!」

 

本納駅の近くで書いたと思われる。全く面白くない。何を思ってこの一文を残したのだろう。(なお、このあたりからくだらないダジャレのメモが増えてきていました。おそらく相当疲れていたのだと思います。)

 

といったような調子で、なんのネタにもなりません。私は本当に外房線に乗っていたのでしょうか。

 

ネタが無いのをごまかす文章もそろそろ尽きてきました。外房線、終了です。

 

14:21 大網駅(千葉県)

f:id:tatatamacenter:20190722063049j:plain

 

文章のあっけなさのわりに2時間半という今回一番の長旅だった外房線に、大網駅で別れを告げます。やっと、やっと、内・外房とおさらばです。

 

気づけば周囲は学校帰りの高校生がちらほら見かけられます。内房線に乗り始めた時は登校ラッシュ真っ只中だったのに、気づけばもう下校の時間です(少し早い気がしますが)。高校生が学校で授業を4、5個ほど受けてお昼を食べて友人と休み時間を満喫していた間に、私がやったことと言えば房総半島を一周しただけです。なんだかとても時間を無駄にしている気がしてきました。考えるのを止めましょう。

 

大網駅は二つの路線のホームを無理やり通路で繋げました、って感じの少し変わった構造をしていました。高校生に紛れながらホームを移動します。ここから我孫子駅までは、短いスパンの乗り換えを数回こなし、ジグザグに北上していくことになります。

f:id:tatatamacenter:20190722063457j:plain

奥が東金線ホーム

 

14:25発 東金線 成東行   

f:id:tatatamacenter:20190722062937j:plain

 

内・外房線を脱出したことにより周囲の乗客や車窓からの風景を楽しむ余裕も出てきました。

 

「求名」と書いて「ぐみょう」と読む駅がありました。かの徳川家康がこの地を訪れた時、地名を尋ねられた人が、名を求められてる、「求名」にしようとその場でほらを吹いたのが由来との説があるそうです。考えた人のセンス、ぐみょう。

 

おっと、疲れがだいぶ溜まってきているようです。すいませんでした。ちなみに求名駅は無人駅とは思えない降車人数でした。

 

 

14:41 成東駅(千葉県)

f:id:tatatamacenter:20190722062849j:plain

 

あっという間に次の乗り換え駅に到着です。成東駅は乗り換え駅だというのにホームに屋根すらありません。千葉県にはホームに屋根をつけるという文化がないのでしょうか。思いがけず異文化に触れてしまったようです。

 

この辺りは短いスパンの乗り換えが多いのでさくさく行きます。

 

14:45発 総武線 千葉行 

 

ここでは電光掲示板の写真を撮り忘れてしまったようです。

 

成東駅の隣は日向(ひゅうが)という名の駅です。名前を見た時は最近個人的にはまっている日向坂(ひなたざか)46を思い浮かべ、何かつながりがあるのかななんて考えたのですが、よく考えたらこんなへんぴなところにかの秋元康が拠点を構えるわけがありませんでした。

 

「きゅ~んきゅんきゅんきゅんどうして」と日向坂46の『キュン』を口ずさみながら、改めてこの先の乗り換えを確認します。

 

「きゅ~んきゅんきゅんきゅんどうしてきゅ~んきゅんきゅんきゅんどうしてあいじゃすふぉ~りらびんにゅ~」

 

f:id:tatatamacenter:20190723074400p:plain

この先の乗換予定

 

前から分かっていたことでしたが、この先、友部駅で約2分の乗り換えを決めなければいけません。17:52友部駅着常磐線から、17:54友部駅発水戸線への乗り換えです。接続しているパターンなのかな?とも思っていたのですが、どんなに調べても降りるホームが何番なのか出てこないため、どのホームに着いても無駄なく迅速に乗り換えができるように頭の中でイメージトレーニングをしておこうと決めました。これをいわゆる「友部ダッシュ(早歩き)」と呼びます。

 

f:id:tatatamacenter:20190723074649p:plain

 

 

「きゅ~んきゅんきゅんせつ~ないきゅ~んきゅんきゅんせつ~ないゆ~のあいきゃすとおぷらびにゅ~」

 

小山駅では約30分の乗り換え時間があります。水戸線から両毛線高崎行19:31発への乗り換えです。

 

小山駅発両毛線は、約30分の間隔で発車します。19:31発の前は19:01の発車です。この両毛線がもう少し短いスパンで運行してくれていれば、だいぶ楽になるのになあ。

 

f:id:tatatamacenter:20190723074755p:plain

小山駅の時刻表

 

「きゅ~んきゅんきゅんきゅんどうしてきゅ~んきゅんきゅん・・・」

 

 

 

 

 

 

 

きゅん?

 

19:01発?

 

 

小山駅への到着は18:56だったはずです。

 

きゅ~んきゅんきゅんきゅんどうして?

 

これって19:01発に間に合うのでは?

 

 

 

 

しかし、Yahoo!大先生のことです。19:31発を表示しているのには何かしらの理由があるはずです。高鳴る胸の鼓動を抑えながら、急いで小山駅の構内図を確認します。

 

 

なるほど、分かりました。

 

両毛線上り6・8番ホームは小山駅の端っこ、それも少し距離があるところに設けられています。対して水戸線下り15・16番ホームはその正反対に位置します。この画像からその距離を正確に判断することは難しいですが、おそらく数百メートルといったところでしょうか。この距離を移動する時間を考慮して、Yahoo!大先生は一本後の電車をご紹介してくださったのだと思います。

 

しかし、しかしです。ネットで調べた情報によれば、早歩きで頑張れば5分ぐらいでたどり着けるとのこと。水戸線の階段は狭くて走ると危ないから走るなよという、地元民らしい厳重な注意付きだったのでこれは信用できるでしょう。早歩きで5分、決して不可能な数字ではありません。疲れ切った体に鞭を打ち、この数百メートルの距離を早歩きで駆け抜ければ、私は電車の遅れなどという奇跡に頼らなくとも、無事相原駅まで帰ることができる。この「小山ダッシュ(早歩き)」を成功させることができれば、一時は不可能に思われた「大回り乗車」の完遂を成し遂げることが出来る。

 

そうと分かれば、選択の余地はありません。小山駅で、なんとしてでも19:01発の両毛線に乗る。この「小山ダッシュ(早歩き)」を成功させる。 

 

激しい雨と強い風、度重なる失敗と逆境続きだったここまでの道のり。しかし気づけば雨は止み、雲の奥にかすかな太陽の光が感じられるようになってきました。そんな空模様とシンクロするように、私はこの日向(ひゅうが)の地で、困難な状況を覆す、現実的な可能性を遂に手にしたのです。

 

それは私にとって、文字通り、希望という名の太陽が照らす日向(ひなた)に降り立ったようでありました。(山田君、座布団一枚持ってきて。)

 

やろう、やるしかない。高校生であふれる車内で、一人満面の笑みを浮かべ、強くこぶしをにぎりしめます。周囲の乗客は、こいつ何してるんだろうと不思議に思ったことでしょう。

 

「Sunday なぜなんて Monday 聞かないで Tuesday 多分理解できないだろう」

 

⑤へと続く⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/24/200000