わさんみつのお話

旅の記録を中心に、様々な情報を書き綴っていきます。

【始発⇒終電】関東7都県を140円で一周、「大回り乗車」に挑戦してきた。 ⑥(終)「理由」

この記事はシリーズものです。是非①からお読みください。

①⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/20/20000

②⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/21/200000

③⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/22/200000

④⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/23/200000

⑤⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/24/200000

 

18:56 小山駅(栃木県)

 

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誰よりも早く電車を飛び出すと、一目散に階段の方向へ向かいます。辺りを見回す限り、共に「小山ダッシュ(早歩き)」を決めようとしている人はいなそうです。心細いですが気にしてられません。進むのみです。

 

小山駅はやはりそれなりに大きい駅でした。改札階にはコンビニや飲食店などが複数立ち並んでおり、時間があればゆっくり見て回りたかったところです。多分この駅でなら、30分ぐらい余裕で潰せたと思います。一枚だけ写真を撮りましたが、慌ててたのかブレブレでした。

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また小山駅には新幹線の停車駅でもあるようです。新幹線の改札の横を抜けた先に、両毛線のホームがあります。それと、すっかり忘れていましたがここは北関東2県目の栃木県です。栃木の地は生まれて初めて降り立つのですが、たった5分しかいることが出来ないのが少し残念です。また今度ゆっくり遊びに来たいです。

 

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覚悟していた通り、両毛線のホームはなかなか遠いです。京葉線ほどあほみたいな距離ではないようですが、なかなかに遠い。しかし足を緩めるわけにはいきません。疲労困憊の身体に鞭を打ち、ひたすらに前に進みます。

 

階段を早足で駆け降りると、広々としたホームが見えてきました。そしてその横には、オレンジと緑のラインが入った電車の姿がありました。

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19:01発 両毛線 高崎行

勝った、勝ったぞ、俺の勝ちだああああああ!!!!

 

藤原竜也ばりの絶叫をかまして床に倒れこみ、ついでに「キンキンに冷えてやがる!!!」と両毛線の床のコンディションを実況してやろうかと思いましたが、せっかく乗れた電車から降ろされたらたまったものじゃないので心の中に留めておきます。

 

いずれにせよ、私の勝ちです。度重なる失敗を経て、ついに、相原駅に帰る現実的な道筋を、この手で掴み取ったのです。

 

思えば、もし館山駅で帰ることを決意していたら、この勝利を手にすることはなかったでしょう。あの時私は、本気で帰りたいと思っていました。でも、そこで再び、一歩踏み出すことができた。先に進むという決断ができた。私という人間も、まだまだ捨てたもんじゃないですね。

 

電車に滑り込み、座るわけにはいかないので、いつも通りドア横に陣取ります。荒れた息を整えて、安堵した胸をなでおろします。

 

 

 

ゆっくりと群馬への道すがらを進み始めた車内の中で、一通り感慨にふけった後、「そういえば・・」と、ある事実が頭をよぎりました。というのも、小山駅で電車に乗り込んでから、電車が走り出すまでに1分は時間があったのです。加えてその間、おそらく水戸線から乗り換えてきたであろう複数の乗客が、済ました顔で電車に乗り込んできました。

 

徐々に徐々に冷静を取り戻してきた脳内に、心からの叫びがこだまします。

 

 

 

「わりと余裕じゃねえか!」

 

 

 

両毛線は、およそ2時間の行程になります。正直、これだけ疲れているなかでの2時間乗りっぱなし(それも立ち乗車)はかなりしんどいです。絶望です。ただ、ここまで来てやめるわけにはいきませんし、いずれにせよ帰らなければいけません。もう一度気持ちを入れ直します。あと5時間、がんばるぞ。

 

以前八高線に乗った時も思ったのですが、なんだか北関東って、外国人の乗客が多い気がします。調べてみると、群馬県は人口の2割が外国人である大泉町をはじめとして、多くの外国人が住んでいるようです。人口に占める外国人の割合は全国3位とのこと。ちなみに私の故郷である秋田県は最下位でした。さすが秋田です。

 

そういえば昔八高線で、見ず知らずの外国人にいきなり話しかけられたことがありました。彼は、「○○駅ってどうやって行けばいい?」と、○○駅へと向かう電車の中で、○○駅までの運賃が記された切符を握りしめながら話しかけてきました。「いや絶対行き方知ってるだろ」とツッコミたくなりましたが、暇だったのでテキトーに話を合わせてると、彼は私の横に座り勝手に身の上話を始めました。

 

私の記憶が正しければベトナム出身だという彼は、もともとは群馬とは遠く離れた県で出稼ぎをしていたようです。しかし、急に会社から異動を命じられ、数日前に群馬県のド田舎に飛ばされて来たとのこと。

 

単身異国の地にやってきて、全く知らない土地、それもド田舎。日本語もおぼつかない様子の彼は、おそらく相当な不安や孤独があったのだろうと思います。久しぶりに人と話したのが嬉しくてたまらないかのように、片言の日本語で一生懸命伝えてきました。きっと私によくわからない質問を投げかけてきたのも、誰かと話したい気持ちがあったのでしょう。煙たがらずに話し相手になって良かったと思える好青年でした。ほんの数駅の間だけ話しただけでしたが、彼に話しかけられたことをたまに思い出します。群馬で元気にやっているといいのですが。

 

両毛線では、残念ながらボーイの姿は見かけませんでした。押しボタンにびっくりしていた彼の姿を見るに、おそらく彼もあまり日本、あるいは栃木に住み慣れていないのではないかなと想像します。ボーイの日本での生活が充実したものであることを祈ります。

 

 

車内にいるのはほとんど学生で、すかすかの車内で様々な制服のラインナップがぱらぱらと入れ替わっていきます。座れる席はたくさんあるのに死にそうな顔をしながらずっと立っている私は、おそらく相当な変人です。

 

並んで座る中学生ぐらいの男女二人組がいました。楽しそうに話しかける女の子と、硬い表情に照れくささを覗かせる男の子。23年も生きてると、この二人が互いに好意を寄せあっていることぐらいは一目で分かります。そして、若々しい恋愛を目にする度に、積み重ねた歳の重さを少し恨みたくなったりもします。

 

二人は伊勢崎駅で仲良く降りていきました。そんな二人の背中に、「今のうちに精一杯楽しめよ」と届かないメッセージを口ずさみます。長続きすることを願います。

 

街の数だけ人がいます。人の数だけ物語があります。今日一日、私はたくさんの物語のエキストラになったような気分でした。今日同じ車両で時を過ごしたたくさんの人たちにとって、私はおそらく記憶には残らないでしょう。でも確かに、彼/彼女らの視界の中にいました。よく考えたら当たり前のことですが、普段は全く気に留めていない周囲の人を一日眺めていると、そんなささやかな役回りも悪くないように思えてきます。

 

なお、クッタクタのわりにやたらとセンチメンタルになっている両毛線の私ですが、この時めちゃくちゃ空腹に悶えていました。「小山ダッシュ(早歩き)」の成功により時間に余裕が生まれたので、大宮駅で晩ご飯にありつくことも出来そうです。大宮駅ともなれば、それはもう食事も選び放題なはず。楽しみです。

 

20:54 高崎駅(群馬県)

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長かった旅路もついに高崎駅まで来ました。これで6都県制覇、残すは埼玉県のみです。

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群馬感のある写真をぱしゃり。せっかく北関東3県を巡っているのだからゆっくり観光でもしていきたいところなのですが、残念ながら改札からでることはできません。「大回り乗車」の歯がゆいところです。

 

高崎駅でもあまり時間がないので、ちゃっちゃと次の電車に移ります。

 

21:05発 湘南新宿ライン 快速 国府津行

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車内がすかすかだったため、思わず誘惑に負けて一度座席に座ってしまいましたが、すぐ立ちあがりました。というのも、座った瞬間信じられないほど大きな眠気の波が押し寄せてきたのです。ここまで来て寝過ごしは絶対にありえません。

 

加えて、この電車は国府津(こうづ)行です。国府津駅は神奈川県の西の方、小田原駅の二駅手前にある駅です。もしこの電車で爆睡し、起きたら国府津駅でしたなんてことになったらシャレになりません。いよいよ大号泣です。「寝たら国府津、寝たら国府津・・・」と自分に語り掛け、意識を奮い立たせます。

 

ちなみにメモには、「国府津(こうづ)に、行こうづ!」とか書いてありました。疲れはいよいよ限界に来ています。

 

すかすかの車内にいる乗客は、数名のおじさんと、スーツケースを持ちながらテディベアを抱き、スマホを触っている女子大生(?)のみでした。だらしなく爆睡を決めるおじさん方の中で、テディベア女子は唯一の癒しです。しかもかわいい。ちょっとテンションがあがります。

 

今回の旅路で気づいたことですが、私は可愛い女子についての記述だけやたらと詳細にメモする傾向があるようです。完全に無意識でした。我ながらキモイです。

 

気づけばテンション女子の隣には彼氏のような男が座っていました。ちょっとテンションが下がります。

 

圧倒的疲れと変わり映えのしない車内のメンツにぼーっとしていたら、あっという間に大宮駅につきました。待ちに待った晩ご飯の時間です。

 

22:24 大宮駅(埼玉県)

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最後の県である埼玉県にやってきました。これにて7都県全制覇は達成です。あとは無事帰るだけですが、その前に晩ご飯です。

 

さあ何を食べようか。ここは大都会大宮、時間は30分あります。ここまで頑張ったのだから、ちょっとぐらい贅沢してもばちは当たらないでしょう。腹いっぱい美味しいものを食べて、ラストスパートのエネルギーをチャージしなければ。意気揚々とホームの階段を駆け上り、飲食店が立ち並ぶエリアへと向かいます。

 

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やってねーーーー!!!

 

全部閉まってんじゃねえか!まだ10時過ぎとかだろ!ここまできてニューデイズで飯を済ませってか!?

 

埼玉県民はもうおねんねの時間なのか!?あああああ!!!???

 

 

 

すいません取り乱してしましいました。大変失礼いたしました。本気でショックだったんです。大目に見てください。

 

改札階を隅々まで調べてみましたが、まじで全部閉まってました。仕方ないのでニューデイズのおにぎりで我慢しました。大宮駅にはもう用はないのでさっさと次へと向かいます。

 

22:46発 埼京線通勤 快速 新木場行

 

ホームに行ったら埼京線があったのでとりあえずそれに飛び乗りました。いずれにせよ武蔵野線に乗り換えるので、この辺はどの電車に乗っても大丈夫です。

 

道中こうこつと、今日一日で通過した駅の数を計算していましたが、予定通りに相原駅までたどり着いた場合、始点橋本駅と終点相原駅を含めて、どうやら201駅に及ぶようです。多いのか少ないのかいまいちピンとこないですが多分多いです。ほぼ普通列車で移動していることを考えれば、多分めちゃくちゃ多いです。

 

201駅かあ、なんて感慨にふけっていたらすぐに次の乗り換えです。

 

22:53 武蔵浦和駅(埼玉県)

 

18時間以上電車に乗っていると、わずか7分の乗車は一瞬に思えてきます。もはや瞬間移動レベルです。本当に乗っていたのかすら怪しいレベルです。

 

さて、武蔵野線のホームへと向かう道すがら、あるものが目に飛び込んできました。立ち食いそば屋です。まだ入れるのだろうか、近づいてみると・・・。

 

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ラストオーダー23:00、入れる!

 

きっと神様が私のこれまでの頑張りを天から見ていてくれたのでしょう。一度大宮駅でがっくりさせてからの粋な計らい、さすがは神様は演出家です。なにはともあれ、早速店内に入ります。

 

本日2度目のお蕎麦です。やっぱり改札内で食べる食事は立ち食いそばと相場が決まっています。多分なんてことない普通のそばなのだろうけど、空腹の身体にはめちゃくちゃおいしく感じます。空腹は最高のスパイスとはよく言ったものです。

 

ちなみに、23:10発の電車に乗らないと相原駅に帰れなくなってしまいます。ささっと食べ終えて次の電車へと向かいます。

 

23:10発 武蔵野線 府中本町行

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実は武蔵野線に乗るのは人生で初めてです。武蔵野線は汚いという噂を聞いていたので、どれだけ汚いのかと期待していましたが、割ときれいで少し残念でした。上総湊駅の待合室のほうがよっぽど汚いです。

 

さて、旅もいよいよフィナーレが近づいてきたところで、ふと改めてこんな疑問が頭をよぎりました。

 

「なぜ私は今、こんなくたくたになりながら、大回り乗車などしているのだろう。」

 

こじつけようと思えば様々な理由を挙げることができます。元々旅が好きなのもあるし、patoさんへの憧れもあります。自分を無意味に苦しめるのが大好きという根っからのドМ根性もあります。正直、ブログのネタが欲しいというのも多少はあります。

 

それらは全て間違いではないのですが、しかし、それらが今回の旅を企画した一番の理由なのかと問われると、いまいち腑に落ちません。というのも、それよりももっと、この旅を振り返った時に思い浮かびあがる様々な情景の方が、よっぽどこの旅路を意味づけてくれているような気がしてならないのです。

 

蘇我での失敗、上総湊のタバコおじさん、館山で味わった絶望、日向の地で口ずさんだ日向坂46、長い時間同じ車両で過ごしたボーイ、水戸線から眺めた太陽。蒲田で降りて行ったおばさんも、虫を地面に叩きつけた女子高生も、MacBookアニキも、両毛線でイチャイチャしていた中学生も、鴨そばもシューマイ弁当も大宮で買ったおにぎりも。もし私が今日「大回り乗車」をしていなければ感じなかったであろう感情が、見ることのなかったであろう車窓が、気にも留めなかっただろう人々が、この旅路にはありました。

 

それらを前にして、私は今日という日が無駄だったなどとは全く思えません。むしろ、まだ見ぬ出会いのために、私は電車に乗っていたのではという気さえします。

 

 

きっと、旅に理由を求めること自体がナンセンスなのだと思います。旅をすれば自ずと様々な出会いや発見、経験があります。それらが最終的に、旅に様々な価値や思い出を与えてくれます。旅に出る理由なんていりません。旅が、理由をくれるんです。

 

良い記憶を良い記憶のまま終わらせるためにも、この旅路をハッピーエンドで終わらせたい。。最後まで駆け抜けます。

 

23:27 西国分寺駅(東京都)

 

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気づけば「大回り乗車」のスタートから19時間が経過しました。夜遅くだというのに東京は人がたくさんいます。しかし、この人々の中で今日最も長い時間電車に乗っていた自信があります。なんだか誇らしい気分で、八王子駅へと向かいます。

 

23:36 中央線 高尾行

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当然のごとく、立ち乗車を決めます。もうかれこれ7時間ぐらい、ずっと立ち続けています。両足が「そろそろよくない?」と語りかけてきてますが、心を鬼にして足をいじめ続けます。

 

そういえば、JRの切符には「有効時間」なるものがあります。改札を通してから数時間以上経った切符は、自動改札で「いや、何時間前の切符やねん、通せねーわ」となってしまい、駅員さんに事情を話さないと改札を出ることができません。具体的に何時間なのかは存じ上げないのですが、少なくとも19時間より短いだろうと思うので、ゴールの相原駅に着いたら駅員さんに正直に「大回り乗車してきました」と伝える必要があります。

 

これがちょっと緊張します。噂によると、すんなり通してくれる駅員さんもいれば、細かく経路を確認してくる駅員さんもいるとか。万が一、怖い駅員さんに「大回り乗車?なにそれ移動距離分全額払えや」とかカツアゲされたら多分泣いちゃいます。大丈夫であることを祈ります。

 

両足から響く「いい加減にしろ」「座れバカ」「ふざけんな」「帰りはタクシー使えよ」という罵詈雑言を懸命に無視しながら、相原駅での駅員さんとのやりとりをイメージトレーニングしていると、あっという間に最後の乗り換え駅、八王子駅がやってきました。

 

23:53 八王子駅(東京都)

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ここまで来ると使い慣れた駅なので迷うこともありません。階段を上り、まっすぐ横浜線のホームに向かいます。

 

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ホームに着くと、これから乗るであろう電車が、私の乗車を今か今かと待ちわびてい(るように見え)ます。電光掲示板に光る「0:04 橋本」の文字に、感慨に浸らずにはいられません。一度は見ることをあきらめかけた、「0:04 橋本」の文字。何の変哲もない、ごくありふれた電光掲示板にこんなにも心動かされてしまうとは、「大回り乗車」とは末恐ろしい存在です。

 

時計の針は既に12時を超えています。ついに、ラストランです。

 

0:04発 横浜線 橋本行

 

日を跨いだにもかかわらず、座席は概ね埋まっており、立っている乗客もちらほら。東京の夜の長さを改めて感じさせられます。

 

 

片倉駅、八王子みなみの駅を通り過ぎていきます。そして、トンネルを2つほど抜けた先に、その場所はありました。

 

0:13 相原駅(東京都)

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帰って・・・

 

 

きたーーーーーーー!!!

 

 

 

帰ってきました。やっと帰ってきました。橋本駅からたった一駅のこの相原駅に、19時間半かけてやっと帰ってきました。

 

しかし、改札を出るまでが「大回り乗車」です。先述のとおり、駅員さんに「大回り乗車してきました」と正直に伝えなければいけません。ちょっとだけ緊張します。

 

私「あの~すいません・・・」

 

駅員さん「はいなんでしょう」

 

私「大回り乗車してきたんですけど・・・」

 

駅員さん「あ・・・」

 

駅員さんは、軽く引いた様子で切符を受け取りました。別に引かなくてもいいんじゃないかな。確かに140円で電車乗りまくるJR側からしたらコスパ最悪な客かもしれないけど。別に引かなくてもいいんじゃないかな。

 

よれ曲がった切符に「無効」の印を押してもらい受け取ると、改札の外へと歩き出します。この瞬間をもって、19時間半、7都県201駅を駆け抜けた「大回り乗車」、完結です。

 

 

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今回の経路です。

 

 

 

 

 

 

「大回り乗車」から2週間たった今(執筆時7月18日)、私は次のチャレンジへの計画に想像を膨らませています。やりたい企画が頭の中からたくさんあふれてきます。

 

私のことなので、きっとどの企画もハードになります。無計画さ故のとんでもないミスも、またしでかすことでしょう。

 

それでも、こうして次のチャレンジを楽しみに思えるのは、あの館山駅で先に進むことが出来たからだと思います。本当に帰りたいと思った時に、先に進むことを決め、結果なんとかすることができた。その自信が、確かに胸に根付いてるのを実感します。

 

「大回り乗車」は、想像以上にしんどかったです。もしやってみようと思われる方がいたら、せめて晴れた日に、長くても10時間ぐらいの規模で抑えておくことをおすすめします。

 

ただ、私は楽しかった。やってよかった。

 

次は関西で「大回り乗車」やろうかな。

 

<完>

【始発⇒終電】関東7都県を140円で一周、「大回り乗車」に挑戦してきた。 ⑤「夕焼」

この記事はシリーズものになります。是非①からお読みください。

①⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/20/200000

②⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/21/200000

③⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/22/200000 

④⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/23/200000

 

17:14 佐倉駅(千葉県)

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佐倉駅のホームには屋根がありました。なんだか安心します。

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数時間ぶりのジェフ千葉要素もありました。低迷しているとはいえ千葉県内での影響力はまだまだ大きいようです。

 

ここから成田線で成田駅、我孫子駅を経由し茨城県へ向かいます。北関東がじわりじわりと迫ってきています。

 

15:17発 成田線快速 成田空港行

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成田空港に向かう電車だけあり、今日初めて外国人を目撃しました。ようやく私が知っている「大都市近郊」に戻ってきた感があります。

 

ここでも特筆するほどのことはなかったのですが、女性自身を一生懸命読んでいるおばさんがいました。たまに電車で夕刊フジとか日刊ゲンダイとか読んでる人を見かけますが、あの人たちってなんなんでしょうか。同じぐらいの値段なら、大手新聞社か、あるいはスポーツ新聞でも読んだ方がよっぽど情報も正確だし、内容も厚いと思うのですが。私が勝手に「世界の七不思議」と呼んでいる物事の一つです。

 

15:30 成田駅(千葉県)

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成田では少し時間に余裕があるので、今のうちにトイレタイムを済ませておきます。出せる時に出さないと。

 

ついでに、どこで買ったのか忘れたオロナミンCも飲んでおきます。飲める時に飲まないと。

 

成田駅は、当然ですがスーツケースを持った乗客が多いです。皆さんきっと様々な旅から帰ってきた、あるいはこれから旅に向かうところなのでしょう。私も一応旅路の途中ということで、なんだか親近感が湧いてきます。多分あっちは全く沸いてないのでしょうが。

 

15:45発 成田線 我孫子行

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成田駅の次の駅は下総松崎(しもうさまんざき)という名前の駅でした。なんだその名前。読めるわけねーだろ。

 

気づいたら向かい側の出張帰りのサラリーマンのような人が、慌てた様子で電話をしていました。車内はそこまで混んでいないので迷惑にはなりません。ただ車内で電話をするというのは、周りの目が気になっちゃう系男子の私にはハードルが高い行為です。

 

それにしても電車の乗客というのは、皆思い思いの過ごし方をします。電話をしている人もいれば、寝てる人、スマホをいじってる人。おしゃべりしてる人に勉強してる人、ぼーっとしてる人、私のようにせっせと周囲を観察してはメモを取っている人もいます。

 

車内で何をしていようと、あるいはどんな目的で、誰とどこに向かっていようと、普段どんな仕事をして、どんな背景を持っていようと、電車に乗っている限りは、一人の乗客でしかなくなります。あらゆるカテゴリーの、あらゆる人々を平等に乗客として受け止める包容力が、電車にはあります。だから、電車は少し安心します。

 

そんなことを思っていると、下総松崎駅の次に安食(あじき)という名の駅に停まりました。だからなんなんだその名前。読めるわけねーだろって。

 

この成田線、終点が我孫子(あびこ)なのもさることながら、しょっぱなから下総松崎(しもうさまんざき)、安食(あじき)と難読駅名のオンパレードです。これはきっと次の駅も相当変な名前が来るのでしょう。どんな駅名が来るのか楽しみです。次の駅名が読み上げられた瞬間に全力でツッコミをいれてやろう。わくわく。

 

 

 

 

 

 

「次は、小林(こばやし)」

 

 

「小林(こばやし)」

 

 

 

いや、急に普通かて。

 

左前に座っている紫色のシャツに黒のロングスカートのメガネ女子がかわゆくてちょっとテンションあがってると、いつの間にか我孫子駅に着いていました。

 

16:28 我孫子駅(千葉県)

 

我孫子駅に着くと、対面するホームに常磐線快速勝田行きが、成田線から降りてきた乗客を迎え入れ次第発車しようと待機しています。向かう方向としては一緒なので、直感で飛び乗ります。

 

後で調べて分かったことですが、結局友部駅で乗る水戸線の電車は変わらないようです。ただ、乗り換えが不安に思われた友部駅では、時間の余裕を持つことが出来そうです。

 

16:28発 常磐線 勝田行

 

車内はそこそこ混んでいて、座れるところがありません。ただ、座ったら今すぐ眠りに落ちていよいよこの旅路を終わらせてしまいそうなので、むしろ好都合です。ここから先は電車の込み具合に関わらず立ち乗車を決めようと思います。

 

そういえば成田線の東我孫子駅あたりで、サンダルに短パンTシャツ、茶髪パーマに首によくわからんケーブルみたいなのを巻いて、Macbookを片手に携えた典型的ビジネス系チャラ男って感じのお兄ちゃんが隣に座ってきました。「なんでサラリーマンなんてやってるの?俺こんだけ遊んでて年収800万だぜ?」とか言い出しそうなMacbookアニキですが、そんなことよりあの首に巻いてあるケーブルみたいなのって、確か肩こりに聞く磁気なるものを発しているとかいうやつですよね。噂に聞いたことはありますが、本当に効果あるんでしょうか。

 

そもそも磁気がなんなのかよくわかりませんが、あれを首に着けてるだけで肩こりが治るとはにわかには信じられません。Yahoo!知恵袋先生で調べてみたところ、同じようなことを思っている人がいたらしく、こんな回答がベストアンサーになっていました。

 

「何でも効くと思えば効きますし、

 

効かないと思えば効きません。

 

金本や新井に、聞いてみてください。」

 

なんてスマートな回答でしょうか。これぞベストアンサーです。

 

そんなどうでもいい調べ事をしていたら、ついに、約10時間ぶりに、県境を越える瞬間を迎えました。

 

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藤代駅をもって、いよいよ茨城県に突入です。あまりに長かった千葉県に別れを告げ、ここから北関東3県を制覇していきます。

 

土浦駅で、にぎやかな女子高生二人組が乗り込んできました。二人は乗り込むやいなや、長身短髪外国人というスペックにもかかわらずどこか顔にエネルギーがないボーイと、必死にスマホを見ている水色のTシャツを着た恰幅な体型のおじさんの間に空いた二つの席を巡って熱い譲り合いを開始します。

 

「座っていいよ~」

 

「いいよいいよ、座りなよ~」

 

「いいっていいって、うち優しいから」

 

ボーイとおじさんの間に座りたくないという気持ちを分かりやすく表現しながら席を譲り合う二人。不毛な争いであることにわりと早々と気づいたようで、大人しく立っていることで合意しました。そのやりとりをボーイとおじさんはどのように聞いていたのでしょうか。その心情に思いを巡らすと、心が痛みます。

 

土浦の次の神立という駅で他の席の乗客が降り、おばあちゃんと壁の間に二人分のスペースが生まれると、女子高生二人組は、「座ろう」という会話すらせずに自然とそのスペースに収まりました。恰幅なおじさんは微動だにすることなくスマホに目を凝らします。車内には様々な人間模様があるんですね。

 

車窓から景色を眺めていると、恋瀬川という素敵な名前の川がありました。私も誰かのひもになりたいと思いました。

 

17:39 友部駅(茨城県)

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友部駅に着くと、例の短髪ボーイが席を立ちドアの前に立ったので、私も彼に続き後ろに並びます。ただボーイは、押しボタン式というシステムを知らなかったらしく、他のドアで乗客がボタンを押しドアが開くのを見るやいなや、全身に電流が流れたかのような驚いたリアクションを取っていました。

 

次の電車まではしばらく時間があります。少し友部駅をうろうろしてみます。

 

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改札階にあがると、なにやら短冊がたくさんあります。そうかもうすぐ七夕か。七夕などというしゃれた文化とは無縁の生活を送っているので、すっかり忘れていました。

 

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なーに浮かれたこと言ってんだよ。幸せになれよ。

 

自分の心が満たされていると、人の幸せにも寛容になれます。かっこつけたセリフを心の中でつぶやいて、なぜか一人で自惚れます。

 

アンケートも設置してあったので、一言だけ。

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柄にもなくお手本のようなコメントを書き残してしまいました。友部駅はなんだかいい気分にさせてくれました。この先も頑張ろう。

 

17:54発 水戸線 小山行き

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ここから西に向かって水戸線、両毛線と乗り継ぎ、小山駅(栃木県)高崎駅(群馬県)と経由していきます。ここからの2路線もなかなかの長丁場です。加えて、小山駅では先述の「小山ダッシュ(早歩き)」も決めなければなりません。気合いを入れていきます。 

 

車内を見渡してみると、なんとあの、さきほどの車内で一緒だった例のボーイがいるではありませんか。チェックの短パンに紫のシャツ、そして大きめの緑のリュックを背負ったボーイは、さも当然のように近くの座席に鎮座し、外の景色を眺めています。もしかして同業者でしょうか?いや、そうだ。そうに違いない。

 

京浜・東北線以来2人目の同業者との出会いに喜んでいると、外から太陽の日差しが射し込んできました。

 

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一日中空を覆っていた厚い雲が少しずつ遠ざかり、本日初めて、空が晴れ間を覗かせてくれました。太陽の光というのはどうしてこうも美しいのでしょうか。ここぞとばかりに写真を撮りまくります。

 

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天気って、不思議だ。ただの晴れ模様に、こんなにも気持ちを動かされてしまう。(映画『天気の子』より)

 

太陽をじっと眺めていると、太陽が「あともう少し、頑張れ」と語りかけてくるような気がします。頑張らなきゃ。なあボーイ。

 

 

新治駅にて、「新治駅を守る会」なる看板が立てられていました。こんな小さな駅にも、その駅を使い、愛し、存続が危ぶまれる際には立ち上がる人たちがいるのですね。駅の持つ力を感じさせられます。

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大和駅というところで、ついに本当に何も無い駅にたどり着きました。繰り返しになりますが、今私は「大都市近郊」の大回り乗車をしているはずです。「大都市近郊」という言葉の定義が揺らぎます。というかなんでこんなところに駅を立てたのでしょうか。

 

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大和駅に停車中の車内から

 

例のボーイは、新治駅を過ぎても、大和駅、下舘駅を過ぎてもまだ乗っています。いよいよ本当に同業者な気がしてきました。

 

しかし、残念ながらこれ以上ボーイの様子を伺っている暇はありません。なぜなら、運命の「小山ダッシュ(早歩き)」に挑む時が、刻一刻と迫っているからです。そう、今日一日の命運を分ける小山駅の5分間。繰り返し小山駅構内の地図を確認し、進むべきルートを頭に叩き込みます。

 

改めて「小山ダッシュ(早歩き)」の概要を確認しておきましょう。今乗っている電車が小山駅15番線ホームに到着するのが18:56。両毛線普通高崎行が8番線を発車するのが19:01。小山駅の両端、その間およそ数百メートルを擁する両ホームの間を、全力ダッシュ(早歩き)で移動し乗り換えを成功させるというものです。これが成功すれば、最終目的地相原駅まで帰ることが出来る、しかし失敗すれば、相原駅への到達は絶望的になります。この5分間に、今回の「大回り乗車」の成否が懸っています。

 

水戸線の車掌は、小山駅での両毛線の接続電車をやはり19:31発とアナウンスしています。そのアナウンスを聞きほくそ笑む私。車掌さんよ、申し訳ないがその電車には乗らないんだ。

 

例のボーイは、ついに小山駅まで乗ってきました。彼が本当に同業者だったのかどうかは分かりませんが、これほど同じ電車、同じ車両に乗っていると少し親近感が沸いてきます。さようならボーイ。達者でな。

 

 

 

小山駅に滑り込む電車。次第に速度を緩め、そして完全に止まりました。いよいよ、ドアが開きます。

 

 

⑥へと続く⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/25/200000

【始発⇒終電】関東7都県を140円で一周、「大回り乗車」に挑戦してきた。④「日向」

この記事はシリーズものになります。是非①からお読みください。

①⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/20/200000

②⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/21/200000

③⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/22/200000

 

11:39発 内房線 安房鴨川行

 

この先の旅路でゆっくり休憩できる時間は少ないであろうと考え、館山駅で、朝に買ったシューマイ弁当をたいらげました。冷えていたこともあって、とりたてておいしいというわけでもなく、普通の弁当でした。

 

さて、車内に乗り込むや否や、スマホを取り出し時刻表との格闘を始めます。奇跡的にここから北関東3県を制覇しゴールの相原駅に帰還するルートはないか、あらゆる可能性を模索します。

 

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これが現在予定しているコース。千葉県の右のふくらみは断念。

 

まず、北関東3県を制覇するためには、友部駅(茨城県)⇒小山駅(栃木県)⇒高崎駅(群馬県)のルートを辿らなければなりません。先の大回り乗車の指定区間の図を見て頂ければ分かると思いますが、友部~高崎以外に北関東を通る選択肢はなく、このルートは不動となります。

 

高崎駅から相原駅の手前にある八王子駅まで行くためには、大宮駅を経由するか、八高線を使うかの2つのルートがあります。しかし八高線は本数も少なくスピードも遅いです。大宮駅を経由した方が確実に早く八王子駅までたどり着くことが出来ます。

 

となると、重要になるのは大宮駅⇒相原駅の終電ですが、Yahoo!乗換案内さんによれば、終電は大宮駅22:50発となっています。つまり、友部~高崎を経由し、この電車に間に合うように大宮駅までたどり着く必要があります。

 

しかし、残念なことにどんなに無駄なく乗り換えを完遂しても、大宮駅に着くのは早くて22:50となります。これでは終電の大宮駅22:50発に乗ることができません。やはり想像した通り、従来の目標の達成は困難な状況にあることが分かります。

 

しかし、この事実はむしろ私にとって希望を抱かせるものでした。というのも、大宮駅着22:50、大宮駅発22:50、この「0分」の乗り換え時間を「2分」程度にまで引き延ばすことが出来れば、相原駅まで帰れる可能性が大きく生まれるのです。

 

じゃあどうやってその「2分」を生み出すのか。そこで私が最も可能性があると感じたのが「電車の遅れ」です。都内在住の方ならお分かり頂けるかと思いますが、都内の夜の電車というのは、しょっちゅう遅れます。2、3分遅れがさもスタンダードであるかのように、当たり前のように遅れてきます。駅員さんにとって「電車遅くなり誠に申し訳ございません」はおそらく口癖になっていることかと思います。

 

ただ残念なことに、大宮駅22:50発埼京線は始発電車であり、遅れは期待できません。しかし、大宮駅に22:50に着く高崎駅発21:30高崎線上野行きを、大宮で降りずに先に進んだ時、可能性を感じさせる「電車の遅れ」が3つ見つかりました。

 

・武蔵浦和で武蔵野線23:01発が2分遅れて来て、それに乗り換える

 

・赤羽で埼京線23:07発が1分遅れて来て、それに乗り換え、新宿経由で八王子に向かう

 

・赤羽で23:16発埼京線に乗り込み、新宿で中央線23:27発が6分遅れで来て、それに乗り換える

 

この3つの「遅れ」のうちどれか一つでも実現すれば、私は相原駅まで帰ることが出来ます。ほんのわずかな希望ではありますが、可能性がゼロとは言えないでしょう。一度絶望にうちひしがれた私にとっては、この実現したら奇跡ともいうべき乗り換えが、立ち込めた雲の狭間から差し込んだ一筋の日光のように、すなわち希望として感じられました。

 

奇跡を実現するためには、今後はどんな失敗も許されません。残り12時間、高い集中力をもって進んでいく必要があります。

 

そういえば車内や車窓は全く見てませんでした。おばさんしか乗ってなかったような気がします。あんまり覚えてないけど。

 

12:30 安房鴨川駅(千葉県)

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待ちに待った安房鴨川駅。この駅でようやく内房線は終わりを迎えます。長かった。本当に長かった。

 

少し乗り換え時間に余裕があるので、駅構内を散策します。

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改札の横には水槽があり、様々な種類のお魚が泳いでいました。どうやらここは鴨川シーワールドの最寄り駅らしいです。水槽の横には一人のおじさんがおり、水槽にへばりつくようにしてお魚たちを眺めていました。

 

しかしながら、このお魚たちは明らかに、長い内房線を突破した私を祝福しようとしています。なぜ分かるかって?分かるんです。自信を持って断言できます。この魚たちは私を祝福しています。

 

「すまんなおじさん、このお魚たちは俺のものなんだ」と心の中で語気を強めながら、おじさんをもろともせず水槽の前に強引に陣取ると、彼は大人しく去っていきました。私の圧勝です。悔しかったらサカナクションでも聞いて出直して来い。俺は毎日聞いてるぞ。

 

しかし、私の横柄な態度がお気に召さなかったのか、そもそも祝福する気もさほどなかったのか、お魚たちは言うほど私の方には寄って来ませんでした。

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12:53発 外房線 千葉行 

 

平日の真昼間から房総半島の先端が人でにぎわっているわけもなく、乗客の寂しい車内。次の大網駅まで約2時間の道のりです。

 

館山駅で先に進むことを決意し、ちょっとだけ元気を取り戻した私ですが、正直まだまだテンションは低いです。予定通りのスケジュールを完遂できそうにないショックは小さくなく、自責の念は募るばかりです。

 

何が言いたいかというと、外房線の車窓から景色を楽しみ、乗客を観察しくだらない想像を繰り広げる余裕は全くなかったということです。それどころか、早くこの外房線から、房総半島から脱出したい、そして出来ればもう二度と来たくない、そんなネガティブな感情だけが心を支配していました。

 

それゆえこの外房線の車内の記憶が全くというほどありません。書くことがありません。こんな時のために、道中メモを大量にとっていたのですが、外房線に関しては8行しか書いてありません。例えば、

 

「お色気お姉さんにちょっとテンションあがる」

 

ちょっと記憶にないです。そんなお姉さんいましたっけ。

 

「本納(ほんのう)を研ぎすませ!」

 

本納駅の近くで書いたと思われる。全く面白くない。何を思ってこの一文を残したのだろう。(なお、このあたりからくだらないダジャレのメモが増えてきていました。おそらく相当疲れていたのだと思います。)

 

といったような調子で、なんのネタにもなりません。私は本当に外房線に乗っていたのでしょうか。

 

ネタが無いのをごまかす文章もそろそろ尽きてきました。外房線、終了です。

 

14:21 大網駅(千葉県)

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文章のあっけなさのわりに2時間半という今回一番の長旅だった外房線に、大網駅で別れを告げます。やっと、やっと、内・外房とおさらばです。

 

気づけば周囲は学校帰りの高校生がちらほら見かけられます。内房線に乗り始めた時は登校ラッシュ真っ只中だったのに、気づけばもう下校の時間です(少し早い気がしますが)。高校生が学校で授業を4、5個ほど受けてお昼を食べて友人と休み時間を満喫していた間に、私がやったことと言えば房総半島を一周しただけです。なんだかとても時間を無駄にしている気がしてきました。考えるのを止めましょう。

 

大網駅は二つの路線のホームを無理やり通路で繋げました、って感じの少し変わった構造をしていました。高校生に紛れながらホームを移動します。ここから我孫子駅までは、短いスパンの乗り換えを数回こなし、ジグザグに北上していくことになります。

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奥が東金線ホーム

 

14:25発 東金線 成東行   

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内・外房線を脱出したことにより周囲の乗客や車窓からの風景を楽しむ余裕も出てきました。

 

「求名」と書いて「ぐみょう」と読む駅がありました。かの徳川家康がこの地を訪れた時、地名を尋ねられた人が、名を求められてる、「求名」にしようとその場でほらを吹いたのが由来との説があるそうです。考えた人のセンス、ぐみょう。

 

おっと、疲れがだいぶ溜まってきているようです。すいませんでした。ちなみに求名駅は無人駅とは思えない降車人数でした。

 

 

14:41 成東駅(千葉県)

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あっという間に次の乗り換え駅に到着です。成東駅は乗り換え駅だというのにホームに屋根すらありません。千葉県にはホームに屋根をつけるという文化がないのでしょうか。思いがけず異文化に触れてしまったようです。

 

この辺りは短いスパンの乗り換えが多いのでさくさく行きます。

 

14:45発 総武線 千葉行 

 

ここでは電光掲示板の写真を撮り忘れてしまったようです。

 

成東駅の隣は日向(ひゅうが)という名の駅です。名前を見た時は最近個人的にはまっている日向坂(ひなたざか)46を思い浮かべ、何かつながりがあるのかななんて考えたのですが、よく考えたらこんなへんぴなところにかの秋元康が拠点を構えるわけがありませんでした。

 

「きゅ~んきゅんきゅんきゅんどうして」と日向坂46の『キュン』を口ずさみながら、改めてこの先の乗り換えを確認します。

 

「きゅ~んきゅんきゅんきゅんどうしてきゅ~んきゅんきゅんきゅんどうしてあいじゃすふぉ~りらびんにゅ~」

 

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この先の乗換予定

 

前から分かっていたことでしたが、この先、友部駅で約2分の乗り換えを決めなければいけません。17:52友部駅着常磐線から、17:54友部駅発水戸線への乗り換えです。接続しているパターンなのかな?とも思っていたのですが、どんなに調べても降りるホームが何番なのか出てこないため、どのホームに着いても無駄なく迅速に乗り換えができるように頭の中でイメージトレーニングをしておこうと決めました。これをいわゆる「友部ダッシュ(早歩き)」と呼びます。

 

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「きゅ~んきゅんきゅんせつ~ないきゅ~んきゅんきゅんせつ~ないゆ~のあいきゃすとおぷらびにゅ~」

 

小山駅では約30分の乗り換え時間があります。水戸線から両毛線高崎行19:31発への乗り換えです。

 

小山駅発両毛線は、約30分の間隔で発車します。19:31発の前は19:01の発車です。この両毛線がもう少し短いスパンで運行してくれていれば、だいぶ楽になるのになあ。

 

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小山駅の時刻表

 

「きゅ~んきゅんきゅんきゅんどうしてきゅ~んきゅんきゅん・・・」

 

 

 

 

 

 

 

きゅん?

 

19:01発?

 

 

小山駅への到着は18:56だったはずです。

 

きゅ~んきゅんきゅんきゅんどうして?

 

これって19:01発に間に合うのでは?

 

 

 

 

しかし、Yahoo!大先生のことです。19:31発を表示しているのには何かしらの理由があるはずです。高鳴る胸の鼓動を抑えながら、急いで小山駅の構内図を確認します。

 

 

なるほど、分かりました。

 

両毛線上り6・8番ホームは小山駅の端っこ、それも少し距離があるところに設けられています。対して水戸線下り15・16番ホームはその正反対に位置します。この画像からその距離を正確に判断することは難しいですが、おそらく数百メートルといったところでしょうか。この距離を移動する時間を考慮して、Yahoo!大先生は一本後の電車をご紹介してくださったのだと思います。

 

しかし、しかしです。ネットで調べた情報によれば、早歩きで頑張れば5分ぐらいでたどり着けるとのこと。水戸線の階段は狭くて走ると危ないから走るなよという、地元民らしい厳重な注意付きだったのでこれは信用できるでしょう。早歩きで5分、決して不可能な数字ではありません。疲れ切った体に鞭を打ち、この数百メートルの距離を早歩きで駆け抜ければ、私は電車の遅れなどという奇跡に頼らなくとも、無事相原駅まで帰ることができる。この「小山ダッシュ(早歩き)」を成功させることができれば、一時は不可能に思われた「大回り乗車」の完遂を成し遂げることが出来る。

 

そうと分かれば、選択の余地はありません。小山駅で、なんとしてでも19:01発の両毛線に乗る。この「小山ダッシュ(早歩き)」を成功させる。 

 

激しい雨と強い風、度重なる失敗と逆境続きだったここまでの道のり。しかし気づけば雨は止み、雲の奥にかすかな太陽の光が感じられるようになってきました。そんな空模様とシンクロするように、私はこの日向(ひゅうが)の地で、困難な状況を覆す、現実的な可能性を遂に手にしたのです。

 

それは私にとって、文字通り、希望という名の太陽が照らす日向(ひなた)に降り立ったようでありました。(山田君、座布団一枚持ってきて。)

 

やろう、やるしかない。高校生であふれる車内で、一人満面の笑みを浮かべ、強くこぶしをにぎりしめます。周囲の乗客は、こいつ何してるんだろうと不思議に思ったことでしょう。

 

「Sunday なぜなんて Monday 聞かないで Tuesday 多分理解できないだろう」

 

⑤へと続く⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/24/200000

【始発⇒終電】関東7都県を140円で一周、「大回り乗車」に挑戦してきた。③「憧れ」

この記事はシリーズものになります。是非①からお読みください。

①⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/20/200000

②⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/21/200000

 

8:58(実際は9:09頃?) 内房線 館山行

 

強い風の影響で約20分遅れで到着した電車に乗り込み、長い内房線の旅を再開します。木更津行きが去ってからは、たった一人で異臭の放つ小さい小屋に一人たたずんでいました。かれこれ40分近く上総湊駅にいたのでしょうか。頼むから終点駅ぐらいはもっと大きい駅にしてほしいものです。

 

ここらへんまで来ると車内はがらがら、かつ通る駅は無人駅がスタンダードです。車内には、靴を脱いでシートに足をあげてくつろいでる人もちらほら見かけます。私も堂々と4人掛けのシートを独占することにしました。

 

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風の影響でゆっくり進む電車に揺られながら、内房線の車窓から景色をのんびり眺めます。この時間、正直なかなか良いものでした。特筆すべきことは特にありませんが、日々のあわただしい生活から少し身を離し、ぼーっと景色に身を委ねる時間は、とても癒しにあふれています。天候がうんぴっぴなのだけが悔やまれます。ようやく電車旅らしくなってきました。

 

9:40 館山駅

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豊かな情景のおかげで内房線長すぎ問題も解決し、気づけば館山駅に到着です。ここからもう一度乗り換えて内房線の終着安房鴨川駅に向かいます。

 

館山駅はありがたいことにそこそこ大きい駅でした。なんだか西洋風のしゃれた二階建ての駅舎に、駅前にはヤシの木が旅人をお出迎えしてくれています。天気が悪いせいで写りがあまりよくないですが、晴れた日に館山に観光や用事で来たら、なかなかにテンションがあがりそうな気がします。

 

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しかし、寝不足が深刻になってきている私は、次の電車までの短い時間を仮眠にあてることにしました。数分の仮眠も、今の私にとっては貴重な休息になります。館山駅のホームにはなんと屋根もあり、さらにきれいな休憩スペースまであります。なんという大都会でしょう。これは快眠が期待できます。ほどなくして、私は深い眠りに落ちました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・。

 

 

嫌な予感「おーい、そろそろおきろー」

 

私「なんだようるせーなー」ムニャムニャ

 

嫌な予感「いいから早くおきろー」

 

嫌な予感は、急に思い立ったかのように私を起こしにかかりました。気持ちよく眠っていたところではありますが、あまりにしつこいので仕方なく起きます。

 

嫌な予感「おはよう和三蜜」

 

私「気持ちよく寝てたのに起こしやがって」

 

嫌な予感「そんなことより、改札階にある電光掲示板で次の電車を確認したほうがいいと思うよ」

 

私「なんでだよ」

 

嫌な予感「なんとなくだけど、なんか嫌な予感がするの」

 

次の電車は10:11発の安房鴨川駅行きです。蘇我駅での反省を生かし、次に乗る電車はしっかり確認し頭にいれてあります。私は、一度犯したミスは二度と犯さない男です。

 

しかし、嫌な予感に「嫌な予感がする」と言われた日には、なんだか嫌な予感がします。仕方ないので、2階の改札階に登って電光掲示板を確認します。

 

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私「・・・」

 

私「・・・・・・・・」

 

嫌な予感「やっぱりね、なんか嫌な予感したんだよね」

 

 

私「・・・・・・・・」

 

嫌な予感「だって1時間も寝てるんだもん」

 

「だって1時間も寝てるんだもん」

 

「だって1時間も寝てるんだもん」

 

 

 

崩れ落ちそうな膝をなんとか支えながら、私は目の前に示された事実が何かの間違いである可能性を必死に頭の中で模索しました。

 

しかし、そんな努力には何の意味もありませんでした。どんなに頭をひねろうと、どんなに目をこすろうと、私がここ館山駅で、1時間に1本の電車を前にして、すやすやと眠り呆けていたという事実は、微動だにすること無く私の目前に鎮座しています。

 

呆然としながらホームの待合室に戻ってきた私は、周りの目など気にする余裕は全くなく、魂の抜けたようにベンチに座り込み、うつむき頭を抱えました。

 

 

 

やってしまった。

 

 

 

これから先に進んだところでおそらく今日予定していたスケジュールの完遂は困難でしょう。多少余裕のあるスケジュールを組んでいたとはいえ、蘇我駅での失敗に続いて、この1時間半近い遅れに対応できるほどの余裕は、どう考えてもありません。だからといって、ここまできて「やっぱり群馬は諦めて関東6都県制覇に変更します」なんていうのも、全く気乗りしません。あまりにもみじめで、無様なだけです。

 

この現実が、紛れもない事実であることをようやく理解した後、最初に胸に去来したのは後悔でも、自責の念でもなく、言うなれば絶望に近い感情でした。

 

 

私には、patoさんという大好きなライターさんがいます。彼がSPOTというおでかけメディアに掲載している過酷な旅の記録が私は大好きであり、憧れでもありました。この「大回り乗車」の存在を知ったのも、patoさんの記事がきっかけでした。

 

patoさんは、どんな過酷な旅路であろうとも、当初に決めたスケジュールを必ず実行してみせます。それも、大きなミスもほとんどなく、時には驚くべきような睡眠時間で旅を成功へと導いて見せます。元来不毛かつ過酷な旅が大好きな私は、patoさんの記事に心躍らせ、ただ文章を読むだけではなく、私も旅を実行する側の人間でありたいとの思いを深く募らせていました。 

 

それが、このざまです。patoさんの旅路からしたら足元にも及ばないスケジュールで、それも初めてまだ数時間という段階で、小さなミスの連続の果てにこの致命的なミス。

 

私には、patoさんのような旅を成し遂げる力はなかったのです。私は所詮、何のとりえもないただのフリーターなんです。何の取柄もない人間は、大人しく平凡に生きていくのが筋ってもんです。憧れは、憧れのまま終わらせておくべきだったんです。

 

今すぐ帰りたいと思いました。私には、「大回り乗車」なんかできっこなかったんだと。しかし、ここは房総半島の先端、館山という場所です。ここで旅を止め帰路につこうにも、またあの長い長い内房線に、それもこんなにも沈んだ気持ちで乗らなければなりません。その道のりは想像するだけであまりにもしんどく、あまりにも辛い。

 

 

進むも絶望、戻るも絶望。この縁もゆかりもない館山という土地で私は、憧れも目標も無残に絶たれ、進路も退路も塞がれ、絶望という言葉でしか表現できないような、困難な状況に追い込まれました。

 

足元を呆然と眺める私の目には、気づけば涙が溢れていました。比喩などではなく本当に、涙で地面が潤んできました。

 

この先どうしようか。ブログもやめようか、どうせ続かないし。真面目に就活して、正社員でも目指そうかな。どうせそれも続かないんだろうけど。

 

自身の愚かさによって招いた絶望は、自己否定感に姿を変え、私を襲ってきます。自分で自分の心を傷つける行為は、なによりも苦しいものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

いずれにせよ、進むのか、戻るのか、次の内房線安房鴨川駅行が出るまでには結論を出さなければなりません。現実に向き合い、この先の行程について考える必要があります。

 

この時私の心の中には、帰りたいという気持ちが大勢を占めていました。その時ネックになるのが、長い長い内房線です。これまでの内房線の道のりが、頭の中にフラッシュバックしてきます。

 

ジェフ千葉一色の蘇我駅。床に打ち付けられたあげく、傘の先端で遊ばれた虫。ずぶ濡れの女子高生。上総湊駅の臭い小屋。そしてタバコおじさんの背中。

 

 

 

・・・タバコおじさん。

 

 

 

 

タバコおじさん。そうだ、上総湊駅で彼は、激しい雨風の中でも、到底不可能に思える状況の中でも、タバコを吸うことを決して諦めようとはしなかったではないですか。諦めることなど微塵も頭にないかのように、ひたすらにライターの火を灯し続けていたではありませんか。そんな彼の背中は、願いが叶ったか否かとは全く関係のない次元で、かっこよく輝いていました。

 

それに比べて私はどうでしょう。館山駅でめそめそしながら、帰りたいなどとわめいています。あまりにもかっこ悪い。あまりにも、あまりにもかっこ悪いぜ俺。

 

しかし、ありがたいこととに私にも、この背中を輝かせるチャンスが残されています。それは、ほんのわずかな輝きかもしれません。でも、最後まで希望を捨てなかったという誇りを胸し、堂々と日々の生活に立ち返るチャンスが、まだ残されているのです。その方法は唯一、先に進むことです。

 

ほとんど消えかかっていた心の炎が、少しだけその勢いを取り戻し始めました。先に進んだところでつらく苦しい旅路になることは逃れられないでしょう。しかし、進むも絶望、戻るも絶望。なら、先に進んでやりましょう。それに時刻表というのはたいへん複雑怪奇な代物であり、ダイヤも各地で乱れている今日、もしかしたら奇跡的に従来の目標を達成できるルートがあるかもしれません。

 

結論は出ました。先に進みます。テンションは相当落ち込んでいますが、とりあえず行けるとこまで行こうと思います。

 

 

④へと続く⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/23/200000

【始発⇒終電】関東7都県を140円で一周、「大回り乗車」に挑戦してきた。 ②「試練」

この記事はシリーズものです。是非①からご覧ください。

①⇒https://www.wasanmitsu.com/entry/2019/07/20/200000

 

6:02 東京駅(東京都)

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着いた瞬間に目が覚めるというちょっとした奇跡に救われ、無事降車。ご存知日本を代表するターミナル駅、東京駅です。

 

ここでの乗り換え時間は8分。しかし、この先千葉県内に入ると駅構内での買い物が満足に出来なくなる可能性があります。時間は少ないですが、ここらで一度食糧調達をしておきたいと思い、駅弁屋さんでお昼ご飯用のシューマイ弁当を一つ購入しました。

 

さあ電車の出発まであと5分、「次のホームはどこだっけ」とスマホを取り出します。

 

ふむふむ次に乗る電車は・・・「京葉線」。

 

・・・ん?京葉線?あと5分で出発?

 

 

 

 

やばくね?

 

 

2時間ぶり本日2回目の全力疾走(早歩き)が始まりました。名付けて京葉ダッシュ。亀梨和也がよく小指を立てながら「ギリギリでいつも生きていたいから~」と歌ってますが、私は別に望んでギリギリに生きてるわけでも、話のネタが欲しくて走ってるわけでもありません。ただ普通に生きてるだけなのに、日々こうなっちゃうんですよね。生きづらい世の中です。

 

にしても京葉線遠すぎる。ただ今回は橋本の夜道とは異なり、仲間が数人いました。それも仲間たちは、慣れた足取りと言わんばかりに一定のスピードを維持し、慌てることもなく淡々と進んでいきます。なんて頼もしい仲間たちでしょう。憧れはしないけど。

 

6:10発 京葉線 蘇我行き

 

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慌てていたのか、写真はブレブレでした

頼もしい仲間たちに導かれ、無事に乗り込むことが出来ました。写真のブレに、私の焦りがにじみ出ています。これから、3県目にして最も長い時間を過ごすことになる千葉県へと向かいます。

 

車内はさほど混んでおらず、空席もちらほら。ただ妙に気になったのが、この時間からディズニーのかばんを持った人がチラホラいること(主に女性)です。ディズニーで買い物した時にもらえる紙袋とか、名前分からんけど明らかにディズニー系のキャラクターのストラップをつけてる人だとか、とにかく明らかに「今からディズニー行きます!」って装いの人が社内の半分を占めています。ちなみに私はディズニーの知識が皆無です。

 

こんな時間からディズニーに行くっていうのか?

 

ど平日、それも雨の中で、開園前からディズニーの前で待機しようとでもしてるのか?

 

こいつらは暇なのか?(お前が言うな。)

 

あまりに理解できず、10分ぐらい真剣に悩んで舞浜駅の直前でようやく気付きました。そうかこの人たちは、今からディズニーで働くのか。暇とか言ってしまったこと、とても申し訳ない気持ちになりました。始発から意味もなく電車に乗っている私の方がよっぽど暇人でした。すいませんでした。

 

舞浜でけっこうな人数が降り、だいぶ車内がガラガラになった後、新浦安駅にて本日最初の高校生とエンカウントしました。それも、女子高生です。ちょっとテンションあがります。

 

よく見ると女優の波留に似た美人さんです。かわいい。今のところ今日で一番テンションあがっています。

 

京葉線は、「無印良品は消費税込み価格」という、だからどうしたと言いたくなる情報を垂れ流しながら淡々と進んでいきます。私のメモには、「南船橋駅はけっこう人の乗り降りが多い」という多分残りの人生で二度と使うことの無いだろう知識と、「千葉みなと駅でモノレールとすれ違った!!」という急にハイテンションな情報が記されていました。相当暇だったんでしょう。

 

そんなことを言ってるうちに、次の乗換駅にやってまいりました。

 

6:58 蘇我駅(千葉県)

 

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ついに千葉県上陸です。これから、本日の最難関とも言うべき房総半島一周に挑みます。

 

暇だったくせに電車の中で次の乗り換えをちゃんとチェックしていなかったので、ホームで慌てて確認します。次に乗る電車の情報を、スマホに保存されたYahoo!乗換案内のスクリーンショットで確認。ふむふむ、意外と時間あるな。

 

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あれ、こんなに余裕あったっけ?と少し疑問に思いましたが、まあスクリーンショットにそう書いてあるんだからそうなんでしょう。だったら少し蘇我駅で時間を潰すとしますか。

 

蘇我駅は意外と(?)栄えており、駅構内にはコンビニだけでなく、蕎麦屋や牛丼屋といった飲食店も備えている充実ぶり。ちょっとテンションがあがります。また、駅全体がJ2に所属するサッカーチーム「ジェフ千葉」一色です。朝ごはんもろくに食べていなかったので、今後の長旅に備えて、蘇我で少し腹ごしらえをすることにしました。東京駅で買ったシューマイ弁当は昼に回します。

 

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駅構内で食べるご飯は立ち食い蕎麦と相場が決まっています。私もその例に漏れることなく、迷わず立ち食い蕎麦屋を選択しました。どうせなら旅らしさを出したいと思い、なんだかご当地名物っぽい名前をしている鴨そばを注文しました。後で調べたところ、鴨そばは千葉とは全く関係がないようです。

 

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にしても、ジェフ千葉はいつになったらJ1に復帰するんでしょうか。毎年昇格候補に挙げられながら、かれこれ10年J2でくすぶっています。それどころか最近は下から数えた方が早い順位です。

 

ちなみに私は、低迷しているサッカーチームの専用掲示板を眺めるという非常に性格の悪い趣味を持っています。ジェフ千葉の掲示板はいつでも暇つぶしになるのでとても重宝しています。エスナイデル前監督に対する罵詈雑言はとても見ごたえがりました。最近だとサガン鳥栖の掲示板が非常に良かったですね。

 

さて、お腹も満たされたことだしそろそろホームに向かいましょう。ホームはこれまでの駅とはうって変わって人であふれています。さすがに今から並んで座るのは難しそうです。念のため電光掲示板を見て次に乗る電車を確認します。

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写真は終始ぶれぶれです。反省します。

 

 

・・・ん?外房線?

 

私が乗るつもりでいた7:17発の安房鴨川行きの表示の上には確かに「外房線」と書いてあります。おかしい。俺はこれから内房線に乗るはずだ。そんなはずはない。

 

あわててスマホを取り出しました。先ほどのスクリーンショットを確認します。確かに外房線と書いている。もしや・・と思い一枚画像をスライドします。そして気づきました。

 

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これが、私が本来乗るつもりだった電車のスクリーンショットです。さきほどのスクリーンショットは、スケジュールを立てている時に候補として残しただけのもので、結果ボツになったけれども、削除し忘れていた画像でした。ホームで慌てて次の電車を確認した時に、よく確認せずに違う画像を見てしまっていたのです。

 

要は、やらかしました。開始2時間半で最初のミスをしでかしやがりました。まあでも、どうやら次の内房線はすぐ出るみたいですし、15分程度の遅れならそこまで大きな損失にはならないでしょう。小さなミスをいつまでも引きずっていても仕方ありません。気を取り直して、ホームに入って来た内房線の電車に乗り込みます。

 

後から思えば、この時の私は内房線をとても甘く、いや、とてもとても甘く見ていました。

 

 

7:19発 内房線 上総湊行き

 

高校生でごったがえす車内で、この圧倒的アウェイを乗り切るためにドア横を強気に陣取り自らのスペースを死守しながら、乱れの生じたスケジュールの再調整に取り掛かります。ここで私はようやく、自分のおかしたミスの大きさに気づかされました。

 

下の画像は、内房線の最後の3分の1にあたる、館山駅⇒安房鴨川駅の時刻表です。

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そう、この内房線、なかなかに本数が少ないんです。その数、約1時間半に一本です。

 

なにが「大都市近郊区間」じゃ。ただの田舎じゃねえか。

 

調べたところによると、安房鴨川駅への到着予定は10:52です。蘇我駅で乗り換えをミスすることがなければ、安房鴨川への到着予定は9:43でした。初め、わずか15分足らずと思われた損失は、ふたを開けてみると1時間以上の損失だったのです。

 

加えて、その後の乗り換えを調べてみると、当初予定していた大網駅から銚子方面に海沿いを大きく周り成田駅まで行くコースは、この1時間以上の遅れにより断念せざるを得ないことが分かりました。大網駅から成東駅、佐倉駅と内陸部をショートカットしなければ、成田駅の先に待つ北関東3県攻略に間に合わせることができません。

 

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新しい予定経路です。千葉県の右のふくらみを断念します。

 

やってしまった。これはやってしまった。開始わずか2時間半でのスケジュールの再調整は、この先の道のりを考えると相当メンタルに響きます。ジェフ千葉の掲示板を娯楽目的で覗いていた天罰が下ったとでもいうのでしょうか。

 

思えば、蘇我駅で乗り換え電車を確認した時に感じた違和感を感じていました。なぜその時によく確認しなかったのか。そもそもなぜ蘇我駅に着く前によく確認しなかったのか。確認不足、油断、もともとのスケジュール管理の甘さ・・・。自分のあまりの愚かさに悔しさが募ります。悔しい。本当に悔しい。

 

 

私が悔しさに打ちひしがれ呆然としていると、視界の隅で自分の斜め前に立つ女子高生の鼻に虫が止まりました。友達に指摘されて慌てて女子高生が振り払うと、虫は相当ダメージを負ったようで、雨水に濡れた床の上で弱弱しくパタパタともがいています。

 

すると次の瞬間、その女子高生が持っている傘の先端で、虫を自分のほうに押し出してくるではありませんか。それも、わりと強く、しつこく押してきます。おいおいやめてくれよ。なんで内房線のドア横のわずかなスペースを息絶え絶えの虫とシェアハピしなきゃいけないんだ。俺は今ただでさえ心が折れてるんだ。頼むからやめてくれ。

 

気づけば外は大雨です。大雨どころか強い横殴りの風も吹いてきて、台風が近づいてきていると言われてても驚かないくらいの悪天候です。にもかかわらず、厳根駅のホームはほとんど屋根がなく、高校生たちがずぶ濡れになっており、私の目の前にもずぶ濡れの女子高生が乗り込んできました。ちょっとテンションが上がります。

 

 

しばらくすると、度々入れ替わりを見せつつ車内の大部分を占領していた高校生たちは、大貫という駅でまとめて全員降りていきました。若い声で賑わっていた車内は、一気に私と、真っ黒いパーカーでiPadにやたらと集中している青年との二人っきりになりました。高校生の大群に車内を占拠される圧倒的アウェイを乗り切った仲間意識から、「何見てるん?」とよっぽどダルがらみしようかと思いましたが、どう考えても他者からの干渉を望んでいるような雰囲気に見えなかったのでやめておきました。

 

佐貫という駅のあたりで、外の景色がマジモンの田舎になっていきました。そして、景色の奥に内房線で初めての海を確認。事前情報によると内房線は、相当の距離海沿いを走ることになるようです。

 

8:27 上総湊駅(千葉県)

 

上総湊(かずさみなと)駅周辺は、信じられないくらいなにもありません。この嵐だというのにホームに屋根すらありません。あるのは小さな小屋のようなものだけです。次の電車までは30分以上あるので、ひとまず小屋の中で雨風をしのぐとします。

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上総湊駅のホームにある小さな待合所

 

小さな小屋の中には壁沿いにベンチのようなものがあり、数名のおばさんが電車を待っていました。彼女たちは特に顔見知りでもないようですが、同じ地域に住み、同じ電車を待っている者の共同意識からでしょうか、簡単なあいさつを交わしささやかな世間話を楽しんでいます。残念なことに、どう考えてもこの小屋の中で異質な空気を放っている私は誰からも声をかけられませんでした。

 

外を見ると、この天気だというのに灰皿の前で一生懸命タバコを吸おうとしているおじさんがいました。しかし、いくら傘をさしているとはいえこの横殴りの雨ではさしてないも同然です。全くタバコに火をつけられそうにありません。そこまでして吸いたいんでしょうか。

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それにしてもこの小さな小屋は、ゴミが散乱した床と牛の糞のような異臭が気になります。こんな劣悪な環境で、次の電車まで30分も待機しなければいけません。内房線はとにかく試練を与えてきます。

 

試練といえば、内房線の車内で乗り換えを失敗した心理的ダメージはだいぶ和らいだものの、ここに来る過程で私は、新たな問題に直面していました。名付けて「内房線長すぎ問題」。蘇我駅を出発して約1時間10分、これといって代わり映えのしない、ただただ大雨に降られる景色を眺める退屈さに飽き飽きしながら、ほんのわずか目についた外の様子をせっせとメモに残す時間は「暇」以外の何物でもありません。

 

加えて、まだ内房線全体の半分も来てません。長すぎです。気が遠くなります。

 

ため息をつきながら外に目をやると、例のタバコ吸いたいおじさんが未だにタバコと格闘していました。どう考えてもタバコを吸うのに適していないこの環境で決してライターから離れることの無い左手。どんな厳しい環境でも諦めないという強い意志が感じられます。

 

思えば、大雨の中でタバコを吸う彼の姿と、早朝から過酷な大回り乗車に挑戦する私の姿は、重なるものがあります。その行為に何の意味があるのかと問われれば、納得させる答えを提示するのは互いに難しいでしょう。しかし、今私たちの胸には確かに、この困難なミッションを成し遂げたいと願う強い思いがあります。上総湊を襲う強い雨と風は、彼の灯すライターの炎をいとも簡単に消し去っていきます。しかし、どんなに強い雨風であろうと、私たちの胸に灯された炎までもを消し去ることは出来ないのです。

 

その後タバコおじさんは10分遅れでやってきた木更津行にいつのまにか乗り込んでおり、結局彼がどの程度タバコを吸うことが出来たのかは分かりませんでした。どんなに困難な状況でも、諦めることなく最後まで挑み続けた彼の背中。初めは愚かに見えたその背中は、いつしかかっこいい男の生き様を見せつけていました。

 

私もこの試練の内房線、気持ちを絶やさずに乗り切っていきたいと思います。ありがとう、タバコおじさん。

 

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ホームから見えた上総湊駅前の様子

 

 

どんどん強くなる雨風と、なかなか来ない電車。厳しい走り出しとなった房総半島の旅路には、この後、さらなる試練が待っていました。

 

 

③に続く⇒近日公開予定

【始発⇒終電】関東7都県を140円で一周、「大回り乗車」に挑戦してきた。 ①「未明」


真っ暗な空にぱらぱらと降りしきる霧雨。日時は7月4日(木)朝4:00。私和三蜜ミルク紅茶は、静寂に包まれた細い住宅街の入り組んだ路地を、神奈川県は橋本駅を目指してせっせせっせと歩いていました。

 

Googleマップが指し示す橋本駅への予想到着時刻は、4:35。私が乗ろうと思っている橋本駅発横浜線下りの始発電車の出発時刻は、4:34。

 

そう、大ピンチです。

 

この電車を逃すと、次の電車は5:05発。ど早朝から30分も橋本駅の改札で待ちぼうけを食らうことになります。寝不足の身体に鞭を打ってこの時間に起きている私にとって、しょっぱなからのミスはメンタル的に致命傷になります。絶対に避けなければなりません。

 

日々都会の人込みをメッシばりのステップとスピードで軽快に交わし、致命傷レベルの寝坊をかすり傷程度にごまかしてきた自慢の脚力を存分に発揮しながら、一秒たりとも足を緩めることなく進み続ける私。毎朝のように繰り返される喧騒は、どうやらこの日のためにあったようです。

 

 

 

 

 

さて、タイトルを見れば一目瞭然ではありますが、私は今、「大回り乗車」なるものを始めようとしています。しかしながら、本文をお読みの皆様の中には、

 

「いや「大回り乗車」ってなんやねん」

 

「またしょっぱなから置いて行かれたわ、読むのやめよ」

 

「橋本駅の近くに住んでるんだ、特定したろ」

 

「ばか、あほ、うんぴっぴ」

 

と思われている方もいらっしゃることでしょう。

 

そんな皆様のために、橋本駅に到着するまでの道すがらを利用して、まず「大回り乗車」とはなんなのか、そして本日私が計画している旅路がどのようなものなのか、「早足で」ご説明させて頂きます。 

 

「大回り乗車」とは何か

 

「大回り乗車」は一言で説明すると、「隣駅まで移動するのに、140円切符だけ買って、もんのすごく遠回りして色んな電車に乗っちゃおう」、という金欠鉄道バカの質素な娯楽を指す言葉です。

 

電車の運賃というのは、原則として移動した距離に応じて加算されていきます。移動した距離が長ければ長いほど、運賃も比例するように増えていきます。

 

しかしながら、関東をはじめとするいくつかの都市圏のJRの電車においては、その原則が通用しなくなることがあります。なぜなら、一つの目的地まで行くのに、複数のルートが想定されるからです。

 

例えば、新宿駅から東京駅に移動しようという時、中央線を使って行くこともできますし、山手線を使っていくこともできます。無論、中央線と山手線では移動距離が違いますが、入った改札と出た改札は一緒。どのルートを使って移動したのかを、改札でその都度確認することは不可能です。

 

そのような状況を想定してJRは、複雑に路線が交差する大都市圏において、「どのようなルートを使おうとも最短距離の運賃を請求する」というルールを設けました。(正式には、「大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び回数乗車券における特例」というらしい。)つまり、新宿駅から東京駅までの運賃は、最短距離である中央線に基づいて計算します、どんなルートを使おうが同じ運賃で良いですよ、ということです。

 

このルールを逆手に取ったのが、「大回り乗車」です。どれだけ時間をかけて、どんなルートを使って移動しようが、移動しよう出発駅の隣駅で降りたらその金額しか請求されない。たった140円で、たくさんの電車に乗ってものすごい距離を移動することが出来ちゃうわけですね。

 

しかしながら、この「大回り乗車」にはいくつかルールがあります。

・途中、改札から出てはいけない。

・ルートは絶対に重複してはいけない。

・指定の区域内でしか適用されない。等々

 

重要なのは、「ルートは絶対に重複してはいけない」というルールです。言い換えれば、ルートは「一筆書き」でなければならない、ということです。同じ路線を何度も往復したり、一度通過した駅にまた戻ってきたりしてはいけません。ほんのわずかであっても、一度でも通過した駅を再び通過したら、その駅までの運賃を無慈悲に請求されることとなります。

 

また、このような特殊な運賃体系が適用されているのは、全国の大都市圏におけるの指定区域のJR路線のみになります。関東圏もその一つであり、以下の区域に適用されます。

 

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この区域の中で、どう頑張ってもルートが重複しないと戻ってこれない、つまり「大回り乗車」で使うことのできない路線を除いたものが以下になります。

 

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この図に乗っている路線の中で、ルートが一筆書きであれば、どんなルートを使おうと最短距離の運賃で移動できる。これが、「大回り乗車」です。

 

今回の乗車プラン

 

私は以前からこの「大回り乗車」、一度やってみたいと思ってはいました。しかし、そこまで熱心な電車オタクではなく、どちらかというと「きつそうだから」というドМ精神に支えられていた「大回り乗車」への好奇心は、強敵「めんどくせえ」軍による猛攻を耐え忍ぶことができず、なかなか実行に移せずにいました。

 

しかし、今回「ブログのネタが欲しいな」軍の加勢により、晴れて好奇心軍の勝利とあいなり、挑戦を決意しました。

 

さて、そうと決まったらまずはルートの設計です。ルートの設計にあたり、私には以下のような希望がありました。

 

・房総半島に行ったことがないので行ってみたい。

・関東7都県全て通りたい。

・出来る限り大きく回りたい。

・なるべくしんどいコースにしたい。

 

やるからには、スケールはでっかく。可能な限り、最大のルートで。

 

謎に高い意識の下、Yahoo!乗換案内と大格闘を繰り返した結果、これらを全て叶える完璧なコースを発見しました。

 

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水色の丸は乗換駅です

 

 

橋本駅(神奈川県)を4:34に出る始発に乗り、東神奈川へ。そこから、東京駅(東京都)、蘇我駅(千葉県)と移動し、さらに内房線、外房線を使って房総半島を一周。最大限遠回りして成田駅まで行った後、我孫子駅、友部駅(茨城県)、小山駅(栃木県)、高崎駅(群馬県)と北関東を制覇。その後、大宮駅(埼玉県)や武蔵野線を経由し、八王子駅から終電の一つ前の電車に乗り、橋本駅の隣の相原駅に0:14着。

 

所要時間約19時間半、移動距離、7都県201駅を通過し、費用は140円。

 

完璧です。我ながらほれぼれする完成度です。これが私が求めていた、究極の「大回り乗車」です。あとは、実行に移すのみ。

 

 ※なお、八高線、相模線は過去に乗ったことがある、電車が少なくタイムスケジュールに響く、時間がない、等の理由で今回は通らないことにしました。

 

 

 

4:30 橋本駅(神奈川県) 

 

なんとか間に合いました。早足どころか普通に走りました。メッシというよりトッテナムのムサ・シソコばりの猪突猛進だったように思います。知らなかったらググってね。To Dare Is To Do.

 

それはさておき、本当に間に合って良かった。でも無駄口を叩いている余裕はありません。早速発券機の前に足を走らせます。

 

橋本駅から隣の相原駅までの運賃はわずか140円。小銭を発券機に入れ、「140」のボタンを押します。

 

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購入しました。この、たった一枚のこの紙切れが、今日の長い長い旅路における私のパートナーです。息つく暇もなく、今後19時間半出ることの出来ない改札を通過します。いよいよ、始まります。

 

今日のパートナー(140円切符)を絶対に無くさないように大切に胸ポケットにしまい、早足でホームへの階段を下りていきます。始発駅なので当然ですが、電車は既にホームに来ており、発車の時を今か今かと待っていました。簡単に写真だけ撮り、電車に乗り込みます。

 

いくら花の都大東京(神奈川県だけど)とはいえど、こんなど早朝から横浜線に乗り込む人はさすがに珍しいようで、電車はがらがら。シートの隅っこを陣取り、出発を待ちます。

 

4:34発 横浜線 東神奈川行

 

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始まりの時は思いのほかあっけなく、電車はさも当然のように静かに走り始めました。そりゃそうか、電車にとっちゃなんてなことない発車の一つに過ぎないもんな。

 

がたがたと揺れる横浜線。この時間に電車に乗っている人は、皆一様に活力がありません。寝てる人、スマホの画面を眺める人、なんだかぼけーとしてる人。私もその例にもれず、眠たさを押し殺しながら今日の行程の確認を行って時間をつぶしていました。にしても長いな、あんまり先のことは考えないようにしよう。

 

万が一スマホの充電が切れるとたいへん面倒なことになるため、なんJでレスバトルを眺めて暇を潰すこともできません。仕方なく死んだような顔(多分)でぼけーとしてると、いつの間にか電車は混み始め、座れるところもなくなっていきます。

 

目の前に立ったのは、スターウォーズにでも出てきそうな近未来的な腕時計をしたおっさんと、黄緑色の蛍光色のTシャツを着たおっさんという、中年二人組。あの上司がどうだのあの部下がどうだの朝から元気に会社トークに花を咲かせています。にしても、右側のおっさんの黄緑色のTシャツがあまりにもダサい。このおっさんの服のセンスは中学生で止まってしまったんだろうか。

 

蛍光色と言えば、私も中学生の時、水色の蛍光色のベストを愛用していました。とある休日、いつおどおり水色ベストを着用し自転車をあてもなく走らせていたところ、たまたま隣町の中学校に着きました。「○○中ってこんな感じなんだ」と校門の外から校舎を眺め、記念に写真を撮っていたら、練習中の野球部がなにやらこちらを見てくる。それも、わざわざ練習の手を止め、全員こちらを凝視しているではありませんか。水色のベストを着て、後者を撮影する姿はそんなに怪しいものでしょうか。いや、怪しいですね。不審者和三蜜は慌てて自転車に乗り込み、その場から逃走しました。

 

そんな昔話を思い出しているうちに、おっさん二人は新横浜駅で降りていきました。かく言う私も、間もなく最初の乗り換え駅です。

 

5:17 東神奈川駅(神奈川県)

 

今日のスケジュールは、終日かなりタイトなものになっています。乗り換えは原則数分以内。もしものトラブルに備えて多少の余裕は確保してありますが、一回目の乗り換えからちんたらしてるわけにはいきません。

 

加えて、今後の長旅を考えると、立ち乗車は極力避けなければいけません。それに、特に見どころもなさそうなこの京浜東北線は、寝不足な私にとっては仮眠に充てたい路線でもあります。なので、さっさと次のホームに移動し、最前列を確保しました。

 

5:25発 京浜東北・根岸線 大宮行

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無事座席を確保できました。ここから東京駅まで、約40分の道のりです。

 

にしても辺りを見回すと、スーツ姿のサラリーマンに紛れて、「お前この時間からその格好でどこ行くねん」と突っ込みたくなる人がごろごろいます(人のこと言えない)。小綺麗なジャケット来てる割に髭もじゃもじゃなお兄ちゃんとか、草むしりにでも行くんかという格好にぱんぱんのリュックを背負っているおっさんとか。

 

その中でも特に目を引いたのが、斜め前に座るおばさんでした。恰幅な体型に、ばっちり化粧を決め、小さな手提げバックと折り畳み傘を持ち、格好もお出かけ用の良い服を選んでいる彼女は、今からいったいどこに行くのでしょうか。仕事にしては小綺麗が過ぎるし荷物が少なすぎます。友人とのランチを楽しむには、あまりに時間が早すぎます。マジで検討がつきません。

 

もしかしたら、夫との変わり映えのない日々に飽き飽きして、「大回り乗車」でも決め込もうとしているのでしょうか。だとしたら私の同業者です。この先また一緒になって、長い旅路を共にする戦友になるのであれば、ここらで早めに仲良くなっておくのも一つの手です。

 

なんて思っていたら蒲田駅で降りていきました。不意に冷静になって、不毛な長旅はやめようと思い立ったのかもしれません。とても懸命な判断です。さすがは年の功です。

 

戦友おばさんがいなくなりやることもなくなった私は、気づけば眠りに落ちていました。その先に待ち受ける様々な困難を、まだ知る由もなく。

 

 

 

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